生き物・学び・研究センターブログ

2020年5月11日(月)チンパンジーの勉強の軌跡(その4)

ちょっと間が空いてしまいましたが,チンパンジーの勉強の軌跡(その4)です。
京都市動物園が閉園中で,チンパンジーたちにとってもこれまでとは違う生活が始まりました。
「チンパンジーたちのお勉強」の時間もお休みの日が多くなりましたが,この機会にこれまでの記録から見えてきたことをお話ししています。
ちなみに,
(その1)は,屋外運動場で元気に遊ぶチンパンジーの兄弟の話。
(その2)は,コイコとニイニの親子の勉強の進み方のお話。
(その3)は,2017年から2018年にかけて,勉強していた頃のローラのお話。
でした。

こちらは約2年前のチンパンジーの勉強部屋の風景。
まだロジャーが生まれる前なので,5人で写っています。

さて,今回の主役は写真の左から2番目のチンパンジー,コイコです。

とても勉強熱心なチンパンジーです。

(写真いちばん右がコイコ)

コイコの年齢は,推定1977年生まれの42歳(推定)です。

(写真右,問題画面を向いている方がコイコ。左はローラです。)

なぜ推定かというと,子どもの頃にアフリカから連れて来られたチンパンジーだからです。
日本は1979年にCITES,いわゆる「ワシントン条約」を批准し,海外の野生由来の個体を動物園に連れてくることがほぼなくなりました。だから,コイコの世代が日本では野生由来のほぼ最後の世代になります。
さて,そんなコイコですが,2009年に熊本の京都大学熊本サンクチュアリ(当時の名称は,「チンパンジーサンクチュアリ宇土」)からやってきて,京都市動物園の新しいチンパンジー飼育施設で暮らすようになり,早々に「お勉強」に参加してくれました。

そんな頃のコイコ(2009年撮影)
今とほとんど変わりません。
当時,すでに30歳は過ぎていましたが,今と変わらずパワフルでやる気満々で,問題に取り組んでくれました。

しかし,残念ながら,覚えはあんまりよくなくて,4年後の2013年に生まれた自分の子ども,ニイニに追い越されてしまいました。

コイコは右端。真ん中はタカシと遊んでいて,勉強中のコイコの邪魔をするニイニ。

こんなに遊んでいても,子どものニイニの方が覚えが早いのです。

それでもコイコは自分のペースで勉強を続けています。
11年目にはいりましたが,まだまだやる気も衰えていないので,少しずつでも伸びていってくれると期待しています。


田中正之