生き物・学び・研究センターブログ

2021年2月7日(日)チンパンジーの勉強部屋では・・・

チンパンジーの勉強部屋には,「お勉強」用のタッチモニターが3台あります。

最近では,やる気満々の男性3人(ジェームス,タカシ,ニイニ)が場所を占めることが多いのですが,

チンパンジーは全部で6人。
いつもこの3人ばかりだと,残る3人(コイコ,ローラ,ロジャー)が勉強に参加できません。


ローラは,最近,見るからにやりたそうに,ジェームスのそばでじっと見ています。ロジャーも,ニイニがいる間はモニターに近寄れません。


ローラはどんどん大胆になってきて,ジェームスがさわっている画面に手を伸ばすこともしばしば。そんなとき,ジェームスは怒らないのですが,場所を譲ってあげることもしません。そのまま問題を続けます。

ニイニやタカシも,似たようなもので,なかなか順番を代わってくれません。
資源の量や,ある場所が限られている場合,力の強いものが場所やモノを独占してしまうのは,動物の世界ではよくあることなのです。

しかし,ここは動物園。人間が環境に影響を与えられるので,弱いものが負けっぱなしにならないように,ちょっと干渉することにしました。
と言っても,チンパンジーに,弱いものに譲れと説得できるわけはありません。
自分から,席を立つように促すのです。

チンパンジーたちは,基本的には問題に正解したときのごほうびを楽しみに勉強しています。だから,ごほうびがもらえなくなれば,勉強をする気がなくなり,席を立つはずです。
でも,ただごほうびが出てこないだけで問題に正解していれば,それである程度やる気が維持されます。たまにごほうびを切らしてしまうこともあるので,出てくるまで待っていることもあるのです。勉強をやめてしまっても,場所を空けてくれないと,弱い者は勉強には参加できません。

そこで,問題のレベルを,ふだんやっているレベルから少しずつ上げてみました。
やってもやってもできないと,さすがにあきらめると予測しました。

結果,ニイニやタカシは比較的すぐあきらめたのですが,ジェームスは全然できないのになぜか頑張りました。あきらめの悪さには個体差があるようです。
それでも,さすがのジェームスもやがてあきらめて席を空けてくれました。

この日はロジャーとローラも勉強ができた日でした。

(コイコがなぜ来なかったのはわかりません)


田中正之