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2021年2月7日(日)獣医室だより099 アジアゾウの牙

ゾウの牙は門歯(前歯)が変化したものです。
アジアゾウは一般に,オスのみ長い牙を持ち,メスは牙を持たないか,あっても短いとされています。
当園のアジアゾウの若いメス3頭は皆短い牙を持っていますが,その形は各々個性的。

その中でも最もわかりやすいのは,冬美トンクンの牙でしょうか。
下の写真のように,途中から切ったような形の牙をしています。


実はこれ,切った「ような」ではなく,実際に切った後です。
3頭の中でトンクンのみ,以前から先端がとがり気味でした。

トンクンは,以前寝室のワイヤーを咥えて牙を削る癖がありました。
現在ワイヤーは全て鉄パイプで保護されているので,日中グラウンドのどこかで擦っているのだと思われます。
通常,生活に支障がなければ牙を削ったり切ったりはしません。
しかし,今回のトンクンの場合は亀裂が見られたため,また他個体と遊んだ時に刺さる危険性があったため,牙を切ることにしました。

当初,小型のドリルで削ろうとしたのですが,機械の音がいやなのか,先端を当てるとすぐに逃げてしまいます。
飼育担当者と相談の結果,糸鋸を使って切り落とすことになりました。
糸鋸の方が振動が大きいのですが,不思議とおとなしく止まってくれます。
さて,ゾウの牙は歯が変化したものであることは前述した通り。
昔,印鑑の素材に使用されていたことからもわかるように,非常に硬く粘りがあります。
切るのは一苦労ですが,中途半端に切れ目を入れたまま翌日に回すと,そこから変な形に折れる可能性がありました。
短時間で切るべく,複数人で交代しながら突貫作業で切っていきました。

直後のトンクンの様子。
鼻の下になり正面からは見えませんが,最初の2枚の写真のように先端が鈍くなっています。
特に牙を気にした様子もなく,直後の夕ご飯も元気に食べていました。
翌日は我々の腕が筋肉痛になるだろうなと思いつつ,事故の予防ができて何よりでした。

土佐