生き物・学び・研究センターブログ

2021年6月2日(水)マンドリル・ベンケイの不思議

京都市動物園は,6月1日より開園しています。
新型コロナウィルス感染症拡大防止のため,以下に紹介する研究を行っているエリアは現在立ち入りができなくなっており,研究も現在は休止中です。ご理解の程,よろしくお願いします。

以前のブログでもご説明しています。よかったらご覧ください。
サル舎でのテナガザル,マンドリルのお勉強について
(2020年5月20日 (水) ブログより)

これは4月25日から5月31日までの緊急事態宣言に伴う休園期間中に実施したマンドリルでの「お勉強」中のお話です。

マンドリルのベンケイです。(画面がゆがんでいるのは超広角レンズで撮影したためです)

何をしているか,わかりますか?

少し引いて撮った映像です。

マンドリルのベンケイが,タッチモニターの外側のフレームを持って,格子に張り付かせるように引き寄せているところでした。
このためにモニターのスタンド部分が浮いてしまっています。

画面には数字の勉強をするための問題が出ているのですが,この態勢では,ベンケイは問題の画面が見えません。もちろん,ベンケイの周りにいるマンドリルたちも,モニターにさわることができません。

なんでこうなったかというと,ベンケイは数字の勉強をしていたのですが,問題数が30問を超えて頭がつかれてきて,間違いを連発するようになっていました。
周りには,ベンケイの家族たち。ベンケイの隙を見て,ごほうびの分け前をもらうためです。(勉強のモニターは,たいていベンケイがひとり占めしてしまうので,周りの個体にもごほうびが行き渡るように,分けてあげていたからです)

さて,勉強に疲れたベンケイ。かと言って,他の個体に勉強させてあげようという,やさしい気持ちはひとかけらもありません。
問題はもうしたくない。でも,ごほうびはほしい。他の個体に機械はさわらせたくない,,,といういろんな気持ちが高じて,このような行動になったのだと思います。

この場合,ベンケイは問題ができないので,何も得られません。そして,モニターを押さえるために手がふさがっているので,周りの個体がごほうびをもらうのを邪魔することも,追い払うことすらできません。でも手は放せない。。。
行き詰ったベンケイの姿なのです。

こうなると,もうベンケイの意識は勉強には戻ってきてくれないので,あきらめるしかありません。

元は,こんな感じで勉強を待ちかねていて,問題を解いていました。


昨年5月から勉強の機会がほとんどなかったのですが,今年の5月には正解率が60%程度まで上がってきていました。(やはり,続けてやると,それなりに効果はあるようです。)

今後は,間隔はあいてしまいますが,サル舎での勉強も休園日などを利用して継続したいと思います。


田中正之