生き物・学び・研究センターブログ

2020年4月24日(金)マンドリルの不思議

昨日のブログで,京都市動物園で「お勉強」に参加している動物たちは,ごほうびの食べ物(リンゴ片やニンジン片)目当てでやっているだけではなさそう,ということを書きました。
でもそれは,類人猿であるチンパンジーやゴリラでの話で,サルであるマンドリルは,やっぱり食べ物目当てだよなぁ(そうとしか見えないぞ),とも思っていました。ところが,昨日,そうではないかもしれない,という不思議なことがあったので,お知らせします。

マンドリルのベンケイは最近,やる気満々です。


俺がやるんだ,お前ら来るな! とばかりの威嚇(いかく)の表情。


子どもたちは退散するしかありません。


さて,ベンケイの問題が終わって,いつもなら次はオネさんの番なのですが,,,


まだ,やる! どけっ! と威嚇するベンケイ。


オネさんの問題(1から3までの順番を覚える勉強)をやるベンケイ。


ま,そりゃ正解するよね。ちなみに,ベンケイは1から8までの順番を覚える勉強をやっています。


さて,困りました。このままベンケイに居座られたら,オネさんができません。
そこで,ベンケイが問題をやっても,ごほうびの食べ物は与えず,近くで見ているオネさんや子どもたちにあげるようにしました。
ベンケイに,見てるだけの方が得だよ,ということを理解してもらうためです。
でも,この日のベンケイはかまわず,オネさんの問題を続けます。
20問が1回の勉強なのですが,20問が終わってもどかず,次の20問も続けます。
そして次の20問が終わっても,まだどかない。仕方ないのでもう20問,続けました。

この間に不思議だったのは,いつものベンケイなら,他の個体が食べ物をもらっていたら怒ってその個体を威嚇したり,捕まえようとしたりするのに,この日は落ち着いて他の個体が食べ物をもらうのを見ていたのです。自分はやってもやっても,何にも得られないのに。

そしてベンケイが動いたのは,3回目の勉強の19問が終わったときでした。


ベンケイがようやくいつもの定位置に行ってくれたので,オネさんの番が回ってきました。
オネさんがやっている間は,ベンケイは離れた場所で食べ物をもらいます。まるでいつもと同じように,大人しく食べ物を受け取って食べていました。


そして問題に取り組むオネさん。
実はこの日,ベンケイが居座っているときに,彼に動いてもらおうとして,オネさんに気前よく食べ物をあげすぎてしまって,オネさんが初めて10問くらいで,あげる食べ物が無くなってしまいました。
でも,オネさんも,何にももらえなくても問題を続けて,けっきょく20問までやってくれました。

さて,これはどういうことでしょうか?
ベンケイは,自分にとって簡単なオネさんの問題をやること(そして正解すること)で,それなりの満足を得ていたので,食べ物がもらえなくても続けたということでしょうか?
そして,オネさんは,ずっと待っていて,ようやく自分の番がまわってきたので,食べ物がもらえなくても続けたということでしょうか?(その前,ベンケイがやっている間にたっぷりもらったということもあったと思うけれど)

いつも食べ物を求めて,とてもシンプルに生きていると思っていたマンドリルですが,
意外に(というと失礼かも),いろんなことを考えて生きているのかもしれません。(というのも失礼かな!?)


田中正之