生き物・学び・研究センターブログ

2013年5月5日(日)ベンケイとオネさん

京都市動物園のサル舎では,テナガザルとマンドリルを対象に,「数字の順番を覚える勉強」を5年前から続けてきました。隣の類人猿舎で勉強するチンパンジーたちと同じ課題に取り組んで,3種の比較をするためです。また,サルたちにとっては,午後の時間に,ちょっとしたおやつが食べられるよいヒマつぶしとして,自分たちから参加してきてくれました。

そんなサル舎でのお話です。

現在,サル舎には2頭のマンドリルが展示されています。オスのベンケイと,メスのオネです。ベンケイは昨年6月に婿入りしてきたまだ若いオスです。ベンケイが京都市動物園の環境になじんだようなので,昨年の11月からタッチモニターを使ったお勉強にも参加してもらってきました。

画面にさわることにはすぐ馴れたベンケイですが,画面の中のどこを触ればよいかはあまり気にしてくれませんでした。

上の写真は昨年の12月のときのものです。画面の中の白い四角を触ってほしいのですが,なかなか画面を見てくれませんでした。

あんまり見てくれないので,白い四角の中にリンゴを映してみたりしましたが,相変わらず,画面から顔をそむけています。これが今年(2013年)の2月の写真。

そしてこれが2013年4月のベンケイです。ようやく画面に顔を向けてくれるようになりました。そして,画面の中に映っている図形にも気がついて,手を伸ばしてくれるようになりました。これでようやく「数字の順番を覚えるお勉強」が始められます。

熱心に勉強するあまり,自慢の派手な顔をあまりお客さんに向けてくれなくなったのは残念ですが,勉強時間を小さく区切って,背中を向けてばかりにはならないようにしていますので,ご安心ください。

 

ここまで半年かかりました。長いようですが,言葉の通じない動物相手の訓練は,ときとしてこれくらいの時間がかかるものです。この子はいくらやってもダメだ,と見切りをつけるか,かならずできるようになるはずと信じて続けるか,その判断は難しいものですが,長年の経験がその助けになってくれます。

私の場合,テナガザルのシロマティでやはり半年ちかく訓練していましたから,少しづつでも伸びていれば大丈夫,という確信はありました。さて,これからどれくらい伸びてくれるか,楽しみです。

ところで,ペアのもう一人,オネさんですが,

ベンケイが勉強に飽きて,離れていったときに,近づいてきました。

そして画面を押し始めたのです。「これはチャンスだ」と思って,ベンケイと同じように画面に映った白い四角にさわるところから始めると,こちらはあっという間に画面のどこに四角を出してもさわれるようになりました。

そして,早くもベンケイに追いついて,数字の勉強を始めています。

ベンケイとオネの力関係では,ベンケイの方が強いので,ベンケイが勉強している間はオネさんは近づけませんが,ベンケイが勉強に飽きて席を空ければ,それからはオネさんの勉強時間になります。オネさんは,これまで勉強に参加してくれていた,マンマル,ランマン,ロマンのお母さんです。子どもたちほどにはできないかもしれませんが,ひょっとしたらとても覚えがよいのかもしれません。こちらも期待しています。

 

 

生き物・学び・研究センター

田中正之