飼育員ブログブログ

2024年4月21日(日)投薬あれこれ

野生動物は怪我や病気などを隠すので、よく観察して動物の状態を把握することはとても大切です。
私は
・日頃どのような状態か知っておくこと(平常時の把握)
・小さな異常に気付くこと
・「いつもと違うな」と思ったら獣医師に相談すること(感覚的なところがあり、確実に異常と判断できなくても後から、このとき異常だったのかも!と思うことがあります)
を大事にしていますが、動物の異常に気付くことはとても難しいです。

動物の異常に気付く1つとして、便の状態を知る、ということがあります。便は動物が残してくれる貴重な情報です。
動物の健康管理をする上で、便の状態を見ることは基本中の基本と言えます。

私の担当するサル舎では、最近、マンドリルで軟便が続いていました。
獣医師に糞便検査をしてもらうと、原虫がいました。
以前にも原虫が出たことがありますが、整腸剤などを投薬してお腹の調子を治すと原虫が減り、便状も戻るというのが当園のマンドリルたち。
ところが、今回はなかなか収まらず、駆虫薬を投薬することになりました。

と、簡単に書きますが……
これが難関でした……。

獣医師に処方された駆虫薬。苦いのです。
動物に「苦いけど、これを飲んだら治るからね~」と言って聞かせても、毒物を食べないよう、身を守るためにも本能的に変なものは食べない動物たち。当たり前ですが嫌がります。

サルの投薬は手先が器用で賢いこともあり、苦労することが多いです。
当園のサル舎には、4種類のサルがいます。
薬は大前提として美味しいもの、好きなものに混ぜて(隠して)与えます。
今までの私の経験から言えることは
・フサオマキザルの場合、投薬する個体ではない個体に間違って渡さなければ、「他の個体に取られる!」と思うのか投薬は基本的に上手くいく
・ワオキツネザルの場合、口に押し込むことに成功すれば出すことはない
・シロテテナガザルの場合、薬を粉にして蒸しイモに混ぜ込み、団子にして与えるのが1番成功するが、ダメなものはダメ
・マンドリルの場合、頬袋に薬入りの食べ物を入れて後から出していることがあるので、ちゃんと食べるまで見ることが必要。投薬はサル舎最難関。
という感じです。

シロテテナガザルのシロマティーには、苦い薬を入れたイモ団子を排水溝まで持って行って捨てられたことがあります笑

さて、話を戻します…
今回、サル舎最難関、マンドリルへの苦い薬の投薬が必要になりました。

今回の薬は糖衣錠といって、普通に丸呑みすれば苦くない薬です。
しかし、マンドリルの場合は頬袋に入れて後からゆっくり食べ、さらに糖衣錠と言っても薬をチビチビ齧るので、苦味が口に広がり、糖衣錠の意味がありません^^;

①まずはイモ団子から……
受け取り、少しかじって捨てられました。

②続いてバナナ……
受け取り、薬の付いた部分は器用に捨ててバナナだけおいしく食べていました笑

③ハチミツと混ぜて、大好きなパンに塗ってみました!
パンだけ器用に食べました笑
個体によっては水で洗っておりました……。

④黒糖を溶かし、割った薬の周りにコーティング!
獣医師が手伝ってくれました。一度冷やし、再度周りをコーティング。もう何をしてるか分からなくなってきましたー笑
お菓子作りでもしている気持ちでした。
最初の数粒は上手くいきましたが、器用に薬だけ取り出し、返却してくれました泣

⑤「こどもやペットに薬を与えるには」と検索。ヨーグルトを試してみることにしました。
薬を粉にしてヨーグルトと混ぜ、パンに塗って与えました。
パンだけ食べたり、パンを洗われたりしてあっさり惨敗!

薬付きのパンを洗うオネ
パンだけを食べるベンケイ

⑥検索結果から、アイスも試すことに。⑤と同じ結果で、あっさり試合終了。

⑦ジュースにまぜてシリンジで飲ませようとしましたが、そもそも飲んでくれず!泣

⑧ふとひらめき、フサオマキザルのトンキチが入院していたときに投薬で使ったプルーンを試してみることに。ベタベタなので、粉にした薬とよく混ざりました。嫌がり、7割ほどの投薬にはなりましたが、今までで1番投薬できました。
与えたい量よりは少なかったものの、散々試してきた中では1番成功したプルーン!
これだけ試して、何とかプルーンで合格点が出ました!!

これだけ試すと、こんなにもダメか!と笑えてきました!笑
薬を出されたり、洗っている様子を見たりしたときは、賢いなーと思いつつも、お願いだから食べてよ~と思いました。

途中で私も、どんな味がするのかなーと何度も舐めましたが、とってもまずい薬でした💊

マンドリルたち、よく頑張りました~!!

マンドリル担当:櫻井