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2021年1月10日(日)獣医室だより095 ヒラセガメの嘴過長

動物園獣医師は,患者を逐次治療できるという強みがあります。
一方,診療個体が限定されるため,「異常例」「正常例」を見分ける経験は,開業獣医師と比較して少なくなりがち。
更に,診療対象の種数も多岐に渡ります。
このため,種毎の正常状態を知るというのがとても大切になります。

当園ではヒラセガメを2頭飼育しています。
このうち一頭が,餌を食べにくそうにしていると報告を受けました。
確認してみると,嘴に異常がありました。
下の写真が2頭の比較ですが,さて,どちらが食欲不振個体でしょうか。

正解は上の個体。
嘴が伸びすぎて餌が食べにくくなっていました。
爬虫類専門の開業獣医師にとっては明らかな違いかもしれません。
経験値不足の私は,初見で異常な嘴だと断定できませんでした。
このような場合,正常個体と比較して,異常があるかを判断します。
同種個体を複数飼育していることが多い,動物園ならではの判定方法かもしれません。

嘴の過長は,鳥類の嘴と同様に歯科用ドリルで削って処置しました。
その後食欲不振もなく,元気に過ごしています。

土佐