飼育員ブログブログ
2020年10月12日(月)ゴリラについての質問への回答 第3弾
ここからは,複数の質問に答えていきたいと思います!
今回はゴリラたちの体のことについての質問に答えていきます。
Q.ゴリラの毛質や肌の質感は?
A.ゴリラたちの体毛のほとんどは,くせ毛のような毛質なので,触ると少しゴワゴワした感じです。唯一,モモタロウの背中やお尻の白い毛の部分は短い直毛なので,なめらかな触り心地です。
ゴリラたちの皮膚は,ヒトに比べて厚いのでヒトと比べると少しかたい気がします。キンタロウはまだ小さいので,他の3頭と比べると皮膚は柔らかいです。特に印象的だったのは,生まれて数日後のキンタロウの足の裏を触った時。まだ地面に触れたことのないキンタロウの足の裏は,フニフニと信じられないくらい柔らかくて,記憶に残っています。
Q.モモタロウ一家は毛並みがきれいですが,お風呂ってどうしているんですか?
A.ゴリラたちは濡れるのがあまり好きではありません。もちろんお風呂には入りません。モモタロウ一家の毛並みがきれいなのは,健康な証拠です。ゲンキ以外の3頭は若いことも毛並みがきれいな理由です。ゲンキは少し体調が悪いかななどという時は,普段より毛並みが悪くなったりします。また現在は,キンタロウが体に掴まることが多いので,毛が抜けることも多いようで,出産前より毛並みがそろっていません。
Q.オスのゴリラの頭頂部は硬いんですか?柔らかいんですか?
A.ゴリラのオスのとがった頭の部分には,顎を動かすためのとても大きな筋肉がついています。ゴリラたちは,固い樹皮や葉をたくさん食べるので,顎の筋肉がとても発達しているのです。なので,骨のように硬くはなく,モモタロウが走ると頭頂部が少し揺れているのがわかりますし,食べているときによく見ると,ちゃんと頭の方の筋肉が動いているのが見えます。
Q.ゴリラも風邪をひきますか?
A.はい,ひきます。鼻水や咳などの症状はどの個体も年に数回あります。症状が長引いたりひどくなったりした場合は投薬治療を行います。ゴリラたちはヒトに近い動物です。風邪やインフルエンザ,新型コロナウイルスなどもヒトから感染する可能性がありますし,逆に私たちがゴリラたちから感染する可能性もあります。なので,担当者はゴリラたちと接する時は手洗いや消毒をしていますし,日ごろから自分の体調管理にも気を付けています。
Q.ゴリラの匂いについて
A.ゴリラの匂いといえば,モモタロウの匂いが特徴的です。怒った時やゲンキが発情しているときなどにとても強く匂います。本当に強く匂う日は,園内の離れた場所にいてもわかるほどです。どんな匂いかというと,脇にあるアポクリン腺から出る匂いなので,ヒトのワキガの匂いに近いです。すごくいい匂い…とは言い難いですが,メスにとっては魅力的な匂いのようで,ゲンキは発情している時に,モモタロウの脇に顔を近づけて匂いを嗅いでいることもありました。また,現在オトナに近づきつつあるゲンタロウも,最近は汗をかいているときなどに少し匂うようになってきました。モモタロウよりも少し酸っぱい匂いがします。またゲンキも出産前は体調のいい日などには少し匂いがすることもありました。
Q.ゲンキの生理について
現在はゲンキは授乳中なので,発情も生理も止まっています。一般的にはコドモが3~4歳くらいになると離乳し,発情が回帰します。発情が回帰するとともにもちろん生理も再開します。ゴリラもヒトとほぼ同じで約28日に1度生理があります。もちろん個体差はあると思いますが,ゴリラの生理はヒトと比べると出血量もとても少なく,ゲンキの場合はお尻をついた床にわずかに血がついていたり,排尿の際に本当に少し血が混ざっていたりする程度です。
Q.ゴリラたちの体重は?
ゴリラたちは1日にたくさん食べるので,朝ごはんを食べる前と,夕方ごはんを食べた後でもかなり体重に違いがありますが,ざっくりでいうと,モモタロウは180kg,ゲンキは90kg,ゲンタロウは70kg,キンタロウは14kgくらいです。
Q.ゴリラの爪はどのくらい伸びますか?ポロっと落ちて生え変わるのは本当ですか?爪は切りますか?
ゴリラたちも爪は伸びます。普段色々なものを触ったり歩いたりすることで自然と削れていきますが,やや潔癖気味なモモタロウの爪は伸び気味です。長いところで2~3ミリほど指から出ているところがあります。モモタロウは爪切りが苦手なので足の指を時々少し切れる程度ですが,ゲンタロウは手足共に爪切りができます。
また,ゲンキは時々爪が突然なくなることがこれまで何度かありました。少しグラグラしてきたから気になって触って抜いてしまったのか,原因はわかりません。そしていつもしばらくすると新しい爪が生えてきます。ただ他の個体は突然爪がなくなったことはないので,ゴリラの爪がポロっと落ちて生え変わるとは言い切れないと思います。
キンタロウの手(上)と足(下)
キンタロウは小さいのでまだ爪もほかの個体に比べると柔らかく,普段いろんなものを触っているからか伸びているのを見たことはありません。
Q.歯磨きをしなくても虫歯にならないんですか?
ゴリラたちは硬い葉や樹皮をたくさん食べるので,それが歯磨きのような役割をしています。ゲンキが若かったころは,ゴリラたちの正しい食べ物が知られておらず,甘いものをたくさん与え,草や枝葉はあまり与えていませんでした。そのため,残念ながらゲンキにはたくさんの虫歯があります。健康診断の際に虫歯を抜いていますが,抜ききれない虫歯から時々膿が出ることがあるので,次に健康診断を行えるタイミングまでは抗生剤で治療をしています。
Q.健康そうに見えるゴリラたちですが,不調は見られませんか?吐き戻しとか…
現在ゴリラたちの健康状態に問題はありません。ゲンキは以前,吐き戻しをしていました。これは動物園のゴリラには比較的よく見られる行動で,よい行動とは言えませんが病気ではありません。ゲンキの場合は,餌である草や枝葉の質が悪くなると,野菜などを食べた後に他にあまり食べたいものがないと思うと,それまでに食べたものを吐き戻してまた食べるということをします。私が担当し始めてからは,草や枝葉の質が下がる秋のみに見られることがありましたが,消防ホースにペレットを入れたものを与えると,それをやることに気が向いて吐き戻しが減るようになってきていて,最近はほとんど見かけません。
Q.ゴリラの歯は何本ありますか?乳歯はありますか?
A.ゴリラたちの歯の本数は,ヒトと同じ32本です。乳歯もあります。キンタロウは今はすべて乳歯ですし,ゲンタロウは5歳ごろから少しずつ前歯の方が永久歯に生え変わってきています。
Q.ゴリラたちのお腹はなぜぽっこりしているんですか?健康上に問題はないのですか?
A.ゴリラのポッコリお腹は健康な証拠です。ゴリラたちが食べた,たくさんの消化に時間のかかる草や枝葉と,腸内細菌が働くことによって発生するガスでお腹がポッコリしているのです。動物園のゴリラの中には,消化しやすい野菜などをたくさんもらっているためあまりお腹の出ていない個体もいますが,野生のゴリラたちはみんなお腹が出ています。当園のゴリラたちは,草や枝葉の多い,比較的野生のゴリラに近い餌をもらっているので,お腹がポッコリしているのです。
ゲンタロウも立派なお腹です!
長くなりましたが,最後まで読んでいただいてありがとうございました!
引き続き,第4弾をお楽しみに!
ゴリラ担当 安井