飼育員ブログブログ

2019年3月20日(水)ちょっと重い話をしてみます・・・

少し前にコンゴで毛布をかぶるチンパンジーの赤ちゃんが話題になりましたね。赤ちゃんチンパンジーをペットとして飼うために捕まったようです。目の前で母親や群れのオトナたちが撃たれた姿も見ていたでしょう。

このニュースを見て,どう思いましたか?赤ちゃんかわいい!や,かわいそうだなぁ,ひどいことをするなぁと思われたかもしれません。でも,どこか遠い国のニュースだと感じていませんか?

京都市動物園で暮らす,コイコも野生由来です。何が言いたいかというと,おそらくコイコも40年前ぐらいにこの子のような思いをしていただろう,ということです。コイコだけではなく,世界中にはたくさんの野生由来のチンパンジーが暮らしています。(※現在はチンパンジーの保護のため,法律により野生から入れることはできなくなっています。)
チンパンジーは群れで暮らす動物です。お父さん,お母さん,きょうだいやいとこ,おじさんなどと暮らします。小さなコドモが1頭でいることはほぼありません。オトナのチンパンジーはとても力が強く,捕まえたり輸送するのは難しいのでオトナは殺し,コドモを捕まえます。亡くなったオトナたちはブッシュミートとして,食肉とされることが多いようです。1頭のコドモのチンパンジーを捕まえるためには10頭のオトナが亡くなっているとも言われています。

捕まったコドモたちの多くは動物実験の施設に行きました。現在みなさんが使っている薬や化粧品などは薬が効くかどうか,安全かどうか動物実験が行われていることもあります。それにより現在も肝炎などの病気をもつチンパンジーもたくさんいます。そういったチンパンジーたちのおかげで救われた命もたくさんあるでしょう。チンパンジーの問題を意外と身近に感じられましたか?

また,今みなさんが使っているスマホやパソコンを作るために必要な資源が採掘され環境破壊により,チンパンジーが暮らす森がどんどん減ってきています。

ニュースやテレビを見たり,動物園に来て
かわいい!
かしこい!
と思う以外にも,もう少しチンパンジーの問題を身近に感じてもらえたらと思います。

新たに野生から入らないということは動物園で増やしていかなければ,未来の私たちの子供たちは本物のチンパンジーを見られなくなってしまいます。動物園でかわいい赤ちゃんが生まれるようにするのも私たちの役目です。

コイコたちが少しでも幸せに暮らせるように,これからも工夫していきたいと思います。

チンパンジー担当  板東 はるな