飼育員ブログブログ

2013年8月19日(月)生き物・学び・研究センター長より

あらためてごあいさつ申し上げます。
まずは自己紹介から。

田中 正之

生まれ: 1968年,神戸市
略歴: 大阪大学人間科学部卒業
京都大学大学院修士課程霊長類学専攻 修了
日本学術振興会特別研究員(DC1)
(京都大学大学院博士後期課程 中退)
(財)東京都老人総合研究所 言語・認知部門研究助手
京都大学霊長類研究所 思考言語分野助手
京都大学野生動物研究センター 准教授 を経て
2013年より 現職 (京都大学野生動物研究センター特任教授を兼任)

学位: 博士(理学) 1997年 京都大学

<動物園に思うこと>

2013年は,京都市動物園が1903年に開園して110周年を迎える記念すべき年です。この年に,動物園は従来の飼育課を,「種の保存展示課」と「生き物・学び・研究センター」という2つのセクションに変更しました。かつて動物園といえば,市民の娯楽施設でした。小さい子どもを楽しませるための施設として発展してきたのです。しかし現在,グローバルスタンダードに照らせば,動物園の第一の役割は,希少種の保全です。世界的な自然破壊が進み,野生動物の多くが絶滅の危機に直面しているのが現状です。動物園で飼育されている動物たちは,もはや生きた標本ではなく,次の世代にその種の遺伝子を伝えていく貴重な一頭なのです。そして動物園がすべきことは,飼育している動物たちを計画的にきちんと繁殖させて,種として保存していくことなのです。
動物園はそんな貴重な動物たちを預かる重い責任を持っています。その責任を果たすために何をすればよいと思いますか? まず一番にすべきことは,それぞれの動物について知ることです。動物の暮らす環境について,動物の社会について,動物の体のつくりについて,正しい知識をもっていることが,次世代への繁殖へとつながっていきます。京都市動物園が開園した20世紀初めの頃には,生きた野生動物についての知識はほとんどありませんでしたから,動物を死なさずに飼うだけで精いっぱいだったと言います。何がその動物にとって正しいか,誰もわからなかったので,手探りで飼っていたのです。その頃に比べれば,野生動物にかんする知識は飛躍的に増えました。今では,インターネットで調べれば,さまざまな情報が手に入ります。それでもなお,本当に欲しい情報,自分が知りたい情報が簡単に見つかることはまれです。しかも,動物にかんする知識は,その動物の置かれた環境によってはそのまま使えないことも少なくありません。けっきょく,知りたいことは自分で調べるのが一番の早道なのです。
生き物・学び・研究センターは,動物について知りたいことを自ら調べるセクションです。これから,私たちが調べたことを,いろんなメディアを使ってご紹介していきたいと思います。生き物・学び・研究センターは,「学び方を学べる」セクションをめざします。動物園職員みずから動物について調べる姿を見て,話しを聞くことで,動物に興味をもつ子どもたちの将来のモデルになりたいと思います。
動物園はさまざまな形で情報を発信していますが,その速報性や発信の手軽さから,インターネットを使った発信が主になっています。動物園HPではイベントのお知らせの他に,ブログで動物たちのことをお知らせしています。また,最近では京都市動物園のFacebookページを開設しました。動物園HPからリンクしています。今後も京都市動物園を見続けていてください。盛りだくさんのニュースをお届けしたいと思います。

2017年6月1日に,生き物・学び・研究センターに新しい仲間が3人も加わりました。新しい仲間の力を得て,これまで以上に活動を「パワーアップ」していきたいと思いますので,お楽しみに。(2017年6月11日更新)

京都市動物園のFacebookはこちら

京都新聞「現代のことば」に掲載されました。
田中正之 (2017) 動物の福祉と保全を考える. (2017年7月25日掲載)
田中正之 (2017) 継続こそ力なり(2017年9月25日掲載)
田中正之 (2017) 会って話すことの意義(2017年12月8日掲載)
田中正之 (2018) 存在する意義と目的(2018年2月7日掲載)
田中正之 (2018) 研究する動物園(2018年4月4日掲載)

毎日新聞 大阪版夕刊で「きょうの動物園」というコラムを連載していました。(2018年3月で連載終了しました)
「きょうの動物園」(外部サイトへのリンクです)
田中正之(2017) 話題あれこれ 裏話紹介 (2017年4月8日)
田中正之(2017) 野生、生物多様性を身近で (2017年5月13日)
田中正之(2017) 福祉考え野性を再現(2017年6月10日)
田中正之(2017) 「お勉強」の担当は誰でも!?(2017年7月8日)
田中正之(2017) 祖国忘れないぞう!(2017年8月5日)
田中正之(2017) 夏の夜、珍しい姿にゾクッ(2017年9月1日)
田中正之(2017) ツシマヤマネコ 見られるチャンス(2017年10月7日)
田中正之(2017) 食べながら賢くなーれ(2017年11月4日)
田中正之(2017) 勉強と「駆け引き」で賢く(2017年12月2日)
田中正之(2018) 我らの仲間「6000万年サルの旅」(2018年1月13日)
田中正之(2018) 自家製ベッド,成長の証し(2018年2月10日)
田中正之(2018) シロマティーの今後、現地で確かめて(2018年3月10日)

2016年度掲載分については,2016年度の成果のページをご覧ください。

ウェブサイト「どうぶつのくに.net」で連載しています。
ドクター・田中正之の「Edutainment in Kyoto Zoo」(外部のサイトへのリンクです)
最近の寄稿分
Vol.40 野生動物学のすすめ(2017年5月12日)
Vol.41 国際エンリッチメント会議に行ってきましたよ(2017年6月30日)
Vol.42 生き物・学び・研究センターの新メンバー!!(2017年8月28日)
Vol.43 やる気のあるサル(ひと)、ないテナガザル(ひと)(2018年3月23日)
Vol.44 野生動物学のすすめ2018(2018年5月9日)

最近の主な業績

(著書・Book chapter)

岡部光太,田中正之 (2017) 闘争が見られたレッサーパンダのペアの繁殖期の行動経年変化. 動物園水族館雑誌58(4): 69-77.
塩田幸弘,八代田真人,河村あゆみ,田中正之 (2017) 動物園で給餌している樹葉の重量推定と栄養含量の季節変化. 日本畜産学会報 88(1): 9-17
Yamanashi Y, Matsunaga M, Shimada K, Kado R, Tanaka M (2016) Introducing tool-based feeders to zoo-housed chimpanzees as a cognitive challenge: spontaneous acquisition of new types of tool use and effects on behaviours and use of space. Journal of Zoo and Acquarium Research 4(3): 1-9. DOI: 10.19227/jzar.v4i3.235
田中正之(2016) 動物園動物のこころをさぐる. 動物心理学研究66(1): 53-57. DOI: http://doi.org/10.2502/janip.66.1.8
田中正之 (2014) 3.2.2 動物の学習に関する基礎知識. 村田浩一・成島悦雄・原久美子(編)「動物園学入門」 東京: 朝倉書店. pp.32-35.
田中正之 (2013) 生まれ変わる動物園 -その新しい役割と楽しみ方-. 京都: 化学同人社. 199p.
田中正之 (2012) 動物園における幸福 -ヒトと動物の幸せのために動物園ができること-.子安増生・杉本均(編)「幸福感を紡ぐ人間関係と教育」 京都: ナカニシヤ出版. pp163-178.
田中正之 (2011) 社会的知性の進化. 京都大学心理学連合(編)「心理学概論」 京都: ナカニシヤ出版. pp. 249-255.
田中正之 (2007) 分類能力の進化. 京都大学霊長類研究所(編)「霊長類進化の科学」 京都: 京都大学学術出版会. pp. 197-207.

(翻訳)
G. ホージー,V. メルフィ,S. パンクフルスト(著),村田浩一・楠田哲士(監訳) (2011) 動物園学. 東京: 文永堂出版.(第4章「行動」担当)

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