救護センターブログブログ

2017年12月12日(火)仲間思いのアトリに寄せて

冬鳥のアトリが救護センターに来ました。
でも,先日のルリビタキと同じく
救護センターに着いた時にはすでに亡くなっていました。
何も治療を行わなかったので受付事項として扱うことはないのですが
今年度から着時死亡の記録をとっています。
「この鳥を助けたい,何とか助かってほしい」と願って,救護センターまで運んで来てくださった方々のお気持ちを,何らかの形に残しておきたいと思ったからです。

アトリはおそらく何かにぶつかったのでしょう。
倒れていたアトリの周りには,何羽かアトリが取り囲んでいたという話を伺いました。
仲間のことが心配でそばにいたのかなと思うと,胸が一杯になりました。

アトリは群れで行動する鳥です。
年によっては万単位の集団を作ることもあるそうです。
集まる鳥,集鳥(あつとり)からアトリの名になったとされています。
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  1羽の写真を撮ったつもりが4羽集まっていました(^^)

漢字では花鶏と書きます。これには,橙色をしたお腹の羽が美しく,
群れて木に止まっている姿が花のようだから,という説があります。
いずれにしても,橙色と黒と白の羽模様は,自然の造形美が感じられます。
渋好みにはうってつけの美しい模様です。
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万葉集に収められた防人歌にアトリの名前が出てきます。
『国廻り 花鶏鴨鳬(あとりかまけり)行き廻り 帰り来までに斎(いは)ひて待たね』
国中を行き来するアトリやカモやケリのように,防人の仕事に出向く私が帰ってくるまで無事を祈って待っていてください。

アトリが渡り鳥の一つに挙げられ詠まれたのは,
昔から馴染みのある鳥だったということでしょうね。

                              救護センタースタッフ 吉川