イベント

2018年5月27日(日)ロリス講演会『ロリス最前線!』を開催しました。

平成30527日にロリス講演会を行いました。

野生で数が減少し絶滅のおそれのあるスローロリスとスレンダーロリスについて4人の演者が話しました。

 

最初に木岡真一さん(恩賜上野動物園・日本動物園水族館協会のスローロリス種別管理者)からスローロリスに迫る危機や残念なことに違法であるにも関わらず日本にも野生からスローロリスが密輸されている現状,そして動物園のロリスたちが健康に暮らすために食事メニューを改善する取組についてお話いただきました。

野生スローロリスは昆虫や花の蜜,樹液などを食べています。果物はあまり食べないと言われており,そんな生態に合わせたメニューにしたところ,血液成分や体重が適正化するなどロリスたちが以前より健康になったということです。

 

 

次に,松島慶さん(京都大学野生動物研究センター大学院生)からアラビアガムを与えることでロリスの腸内細菌叢がどのように変化するのかを検討した研究についてお話いただきました。アラビアガムはアカシアの木からの分泌液です。野生のスローロリスは樹木の分泌液をたくさん食べています。ただし,ガムは難消化性の成分が主になっています。松島さんは消化するために腸内細菌の力が必要であると考え,糞に含まれる細菌のDNAデータから検証を行いました。アラビアガムを与える前後で腸内細菌叢のデータを比較すると大変興味深い結果が得られました。が,結果は松島さんが執筆中の論文が出版されたときに紹介できればと思います。

 

次に,根本慧さん(公益財団法人日本モンキーセンター飼育技術員)から日本モンキーセンター内に作られたロリス保全センターについてご紹介いただきました。旧夜行性展示室だったところを,みんなで改築して手を加えてロリスのために環境を整備して,その場所をロリス保全センターとしました。そこで,動物福祉の向上・研究推進・教育・保全の場としての役割を果たすために精力的に活動している様子をお話いただきました。なお,普段は非公開ですが,ロリスを観察する特別ツアーを組んでいます。

 

最後に山梨から,インド・インドネシアの野生のロリスたちについて紹介しました。インド・インドネシアで,人と近い距離で暮らすロリスたちの様子を写真や動画で紹介しました。

 

普段から共同で様々な活動を行っているわたしたちですが,野生・飼育下でロリスたちの暮らしがよりよいものになるように,これからもみんなで力を合わせてがんばっていければと思っています。

ご参加くださった皆様,どうもありがとうございました。たくさんの方にご参加いただけて本当に嬉しい日でした。

 

生き物・学び・研究センター 山梨裕美