飼育員ブログブログ

2021年3月12日(金)獣医室だより104 インドクジャクの筆毛出血

鳥の全身を覆う羽を正羽と呼び,コートの役割を果たします。
新しく生えかけの正羽は,途中まで鞘に覆われています。
まるで筆のように見えることから,これを筆毛(ひつう)と呼びます。
筆毛は栄養供給を行うために血管が発達しており,これが途中で折れてしまうと,大出血の原因になります。
また,鞘の部分は組織が収縮しないため,皮膚の出血と比べて止血機構が働きにくい傾向にあります。

さて,先日インドクジャクのメスの尾に血液が付着している,と報告がありました。

確認したところ,尾羽の一部が折れて出血していました。
すでに血は止まりつつありましたが,筆羽を羽軸ごと引き抜く処置を行いました。

引き抜いた筆毛。
すでに上側の鞘が剥がれているため,あまり筆のようには見えませんね。
引き抜いた後は血も止まり,展示室に戻すと何事もなかったかのように歩いていきました。

羽根ごと抜くという止血方法は,少々乱暴にも聞こえますが,筆毛出血時の一般的な治療方法です。
そのほかにも,外用軟膏を使用してはいけないなど,鳥類の治療は哺乳類とは随分異なります。
…と書きましたが,常に新たな情報や手技が出てくるのが動物園獣医業界。
もし新たな知見をご存知の方がいたら,教えてくださいね。

土佐