飼育員ブログブログ

2021年1月17日(日)獣医室だより096 アジアゾウの尾の咬傷

子供のころ,遊びが思わぬ怪我につながったことはありませんか。
かさぶたを剥がしてしまい,傷がなかなか治らなかったことは?

京都市動物園の子ゾウ達は遊び盛り。
毎日のように小さな擦り傷を作って動物舎に帰ってきます。
昨年9月に,秋都トンカムが尾に咬傷を負って戻ってきました。
即日消毒して抗生剤を塗布し,その後順調に治癒していきました。
ところが,それ以降なかなか完治しません。

亀裂のようになっているのが外傷部位。
両側から皮膚が再生してきているのですが,かさぶたがすぐに乾燥して落ち,また傷口が開いてしまいます。
痛みはないようでしたが,傷が開いたままでよいことはありません。

傷口周囲の保護と保湿を目的に,ワセリンの塗布を始めました。
ワセリンは,軟膏の基剤にも使われる物質で,当園のアジアゾウでは冬期の爪の甘皮保護に使用しています。
さて,傷口が湿潤に保たれることで皮膚の再生も進み,12月には,以下の写真のように赤い部分が見えなくなりました。
現在では,周囲の皮膚との違いはほぼ分からなくなっています。
トンカム自身はほとんど気にしておらず,もっぱら飼育担当者と獣医師がやきもきした数箇月でした。​
治って一安心です。

土佐