飼育員ブログブログ

2021年1月2日(土)獣医室だより094 ホウシャガメの呼吸雑音

現在閉館中の熱帯動物館。
カメたちはいつも通り餌を食んでいます。
そんな中の一頭が下痢をしたところから,今回のお話は始まります。

褐色透明の下痢をしたカメがいるとの報告を受けて,診察に行きました。
脱水もなく,直後に排泄した便は正常。
翌日以降下痢は続かなかったのですが,代わりに呼吸雑音が目立つように。
呼吸器疾患の可能性を考えてレントゲン撮影を行いました。
診察結果は異常なし。
他にも似たような音を出す個体がいたので生理的な音だろうと判断し,無処置で経過を見ることにしました。
その後現在まで,下痢の再発もありません。

飼育されている方はご存じかと思いますが,カメも呼吸器疾患になります。
通常の動物の呼吸器疾患では触診や聴診が大切なのですが,カメ目は甲羅があるためこれが難しい。
代わりに,レントゲン撮影と超音波検査が有用です。
但し,撮影が特殊なのでちょっと注意が必要。

1 特殊な保定
甲羅を固定することができるので,押さえつける必要がありません。
当園では,段ボール箱にテープで甲羅を固定して撮影しています。

2 特殊な撮影方向
通常の動物では,左から右に抜ける方向,胸から背中に抜ける方向の二方向の撮影が一般的。
しかし,カメの場合,甲羅が邪魔して肺が見にくくなってしまいます。
よって,左右の肺を評価するために,頭から尾に向かって撮影する必要があります(写真の上半分)。

3 特殊な撮影タイミング
カメは危険を感じると首や手足をひっこめてしまいます。
これらをひっこめた状態と出した状態では,撮影像が大きく異なります。
全てを伸ばしたタイミングで撮影したいのですが,しばしば人間とカメの我慢比べになってしまいます。

カメには,哺乳類に見られるような筋肉でできた横隔膜がありません。
また,甲羅があるため,胸を膨らませて呼吸することができません。
代わりに,首や手足を出し入れして体腔の容積を変化させ,また甲羅内の筋肉を動かして臓器を圧迫し,呼吸をしています。
その他,水棲カメでは,口の奥の咽喉頭と呼ばれる部分や,肛門の近くにある副膀胱と呼ばれる器官での水の出し入れ,一部は盛んに皮膚呼吸を行うことでも酸素取り込みを行っています。
一口にカメと言っても様々な違いがあるのが,このグループの魅力です。

土佐