飼育員ブログブログ

2020年9月1日(火)獣医室だより076 ヨシガモと卵泥棒のヘビ

獣医室だより075で,ヨシガモの卵の人工孵卵についてご紹介しました。
最大の目的は,ヘビによる食害を避けるためです。

この春は,コロナウイルス感染症対策のため,約1箇月閉園させていただいていました。
人の気配がなく静かだったからでしょうか。
今年はあちこちでヘビが目撃されました。
水禽舎の周辺でもヘビの目撃例があり,万が一ヨシガモの卵を見つけられた場合,全滅する可能性もありました。
水禽舎の網目を細かくしたり隙間を塞いだりと対策はしたのですが,ヘビは頭の大きさの穴があれば潜り抜けるので,防御にも限界があります。
そこで,有精卵を擬卵と交換しました。
ニワトリ用の孵卵器でヨシガモが孵化するか確証がなかったため,リスクを分散するために,交換するのは有精卵の約半数としました。

そして孵化予定日1週間前,危惧していたことが起こりました。
ヨシガモが抱いていた卵が半分近くなくなっていたのです。
なくなったのは有精卵が2個,擬卵が1個。
卵の破片はなく,池の中に落ちた様子もありません。
ヘビに食べられたのだろうということで犯人を探したのですが見つからず,やむなくすべての有精卵を孵卵器に移すことにしました。

それから数日後,飼育担当者から「ヘビを捕まえた」と無線が入りました。
彼女が捕まえてくれたヘビがこちら。
アオダイショウの幼蛇です。

おなかの一部が膨らんでいますが,ツチノコではありません。
擬卵は中に石膏を詰めているため,飲み込むとヘビも消化できないのです。
ヘビの頭を抑えながら擬卵を頭側に送って吐き出させました。

捕まえたこのヘビは,来園者の方が立ち入らないエリアに逃がしています。
卵を食べられたのは悔しいですが,彼(彼女?)もヘビの本分を全うしているだけですので…
アオダイショウは,手を出さなければ反撃してこないおとなしいヘビです。
もし園内で遭遇した場合も,そっとしておいてあげてください。

土佐