飼育員ブログブログ

2015年9月19日(土)繁殖棟のツシマヤマネコのこと。

まずはみなさまにお詫びをしなければなりません。

繁殖棟にいる非公開のヤマネコたちのことをブログなどでお知らせしていきますと言ったのに,長らく
お知らせができていませんでした。


実は,オスに病気が見つかったのです。
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こちらは病気が見つかる前の姿。

5月を過ぎ,1歳の誕生日を迎える前に体調が悪くなり,少しずつエサを食べなくなっていきました。
いろいろ試したのですが,とうとう食べなくなったためやむを得ず園内の動物病院に入院。
鼻からチューブを食道まで入れ,強制的に流動食を流し込むという日々が続きました。blog20150911-2
 鼻の穴にチューブを入れた姿です。

入院の間,様々な検査をしました。
どうやら心臓がおかしいということで,さらに詳しい検査をその道のスペシャリストにお願いし,動物園外でも検査をしました。


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市内の動物病院でCTスキャンの撮影を始め,いくつかの検査によってやはり心臓に問題があることがわかりました。
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その後,大阪府立大学獣医臨床センターで精密検査を受けたところ,先天性の「三尖弁異形成」という診断でした。
わかりやすく言いますと,「心臓の中にある三尖弁という弁に生まれつき異常がある」ということです。

全身を巡った体の血液は心臓に還ってきて「右心房→右心室→肺→左心房→左心室」を経てまた全身に送られていきます。
三尖弁は右心房と右心室の間にある静脈血の逆流を防ぐための弁です。
その弁の位置が異常で,常に逆流している状態なのです。

先天性であり,とても負担がかかる状態での手術は無理と判断し,環境省と日本動物園水族館協会とも相談した結果,このまま余生を京都市動物園で穏やかに送ってもらうことになりました。

動物園の枠を超え,その道のスペシャリストのご協力で確定診断ができ,投薬のアドバイスもいただきました。
現在は食欲旺盛で,薬のついたエサも自ら食べ安定した日々を送っています。

気温の変化や上下運動など,心臓に負担がかかることを避けるように管理しております。
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これが9月に入って撮った画像です。


この病気は,体調が良くても突然死することがあると聞いています。
「今日1日,生きていてくれたことが嬉しい!」と感じている毎日です。
 

残念ながら日本のツシマヤマネコの繁殖には貢献できませんが,1日でも長く快適に過ごせるように管理していきたいと思いますので暖かく見守っていてください。

あ,繁殖棟のメスと,展示中のみやこちゃんは元気です ^_^
10月17日(土)18日(日)には恒例の「やまねこ博覧会」もあります。
多くの皆さんに足を運んでいただき,ツシマヤマネコのこと,もっともっと知ってもらいたいです!
ぜひ,来てくださいね~ \(^0^)/

種の保存展示課  タカギナオコ