飼育員ブログブログ

2020年10月29日(木)「トラのエンリッチメントにトライ」が論文になりました!2

ちょうど1年前ほどのブログでの話ですが,
京都大学野生動物研究センターの院生さんと共同で
環境エンリッチメントの研究を行っていました。
(環境エンリッチメントって??という方は,こちらをクリックしてください。)

それを別の角度から分析した論文が出ました。

今回の内容は,
「環境エンリッチメントで実際どんな行動が出ているのか」を
把握する目的で実施しました。
学生さんに上記の観察の際に,
「動画・静止画」での行動の記録を追加でお願いしておりました。
それを基にまとめたものになります。

というのも,飼育員は意外と動物を観察する時間が限られていて,
(掃除・餌の準備・動物舎の修繕・教育プログラムや掲示物の準備…などなど)
環境エンリッチメントがどう使われているのか,
目的としている行動が出ているのかなど
よくわかっていないこともあります。
環境エンリッチメントの実施において,
評価は特に重要なのですが,
なかなか現実的には難しい現状があります。

そこで,本来の観察の傍ら,「環境エンリッチメントに関わる行動」を
タブレット端末で記録してもらい,
あとあと,飼育担当(私)が行動を見られるように協力してもらいました。

その結果,環境エンリッチメントに関わる行動の確認することができ,
目的の行動が出ていることがわかりました。
また,映像(動画・静止画)に記録された
環境エンリッチメントアイテムの数が増えるにつれて,
行動の数が増える傾向にあることがわかりました。
(つまり,エンリッチメントアイテムが多様化するにつれて,
 行動が多様化している可能性があるということです。)

これらから,動物園に研究で訪れる学生さんと協力して記録を取ることで,
飼育技術の補助,活性化に役立てられる可能性が考えられました。

なお,本研究は
第65回動物園技術者研究会の最優秀ポスター賞を受賞したものを,
論文化したものです。
(ポスターの内容は,こちらからご覧ください。)

ご協力いただいた皆様,ありがとうございました!
———————————————————
岡部光太,岡桃子 (2020)
アムールトラの環境エンリッチメントに関わる行動レパートリー調査 
  -目的が異なる行動観察との両立の試み-. 動物園水族館雑誌62(2): 25-30.
[要旨] 環境エンリッチメントを行う際に,対象動物の行動レパートリーを把握することは有用である。本研究は,他の研究目的でアムールトラの観察を行う学生から得た静止画及び動画を活用し,行動レパートリーの調査を試みた。結果,環境エンリッチメントに関わる行動をか複数確認できた。また記録した遊具等のアイテム種数と行動レパートリー数に有意な正の相関があり,既存の行動観察手法で得た「種特異的な行動の増加」と関連が考えられた。
キーワード:環境エンリッチメント,連携,アムールトラ,行動レパートリー,行動観察手法
————————————————————–
元アムールトラ担当  オカベコウタ