救護センターブログブログ
2023年9月8日(金)野鳥は野鳥らしく
私達の身近にいる鳥たち。巣から顔を覗かせるツバメの雛、いつ飛び立つのか見守りたくなりますよね。親鳥の後ろに一生懸命ついて走り、泳ぐカルガモの雛、愛らしいですね。毎年、全国各地で人々にガードされながら道路を横断するカルガモ親子もニュースになっています。
私達の暮らしのそばにはこうした野鳥達の命の営みが存在します。昨今では人と野生動物の距離が縮まり様々な問題を引き起こしています。
そしてこの時期散見されるのが雛をとりまく問題です。
生きようと一生懸命な命、助けたくなりますよね。その気持ちは大変よくわかります。しかしながら、救護センターでは雛や幼獣の保護は受け付けておりません。救護センター職員は1羽でも多くの鳥が元気になって野生へ帰れるよう尽力しています。なのになぜ雛は受け入れることができないのか、いまいちど御説明いたします。
野鳥はインコ等の飼い鳥と違い、人が関わるだけでストレスを強く感じる個体も多いため治療や飼育管理そのものが非常に慎重を要するものです。
親鳥は雛をしっかり見守っています。そんな雛を人が連れ去ってしまうのは良いこととは言えません。
交通量の多い道路などで危ないなと感じた時のみ、草むらや木陰に移動させてください。移動させたらすぐにそっと立ち去りましょう。
十分な栄養を摂らせたら大人と変わらない位身体は成長するかもしれませんが、親鳥が雛鳥に教える情報(採食、危機回避等)、スキルを全て人がかわりに教育することは難しいです。突然野に放たれても生きる術を知らない鳥は生きていけません。早々に捕食者に捕らえられ命を終える可能性が非常に高くなります。
被捕食者に分類される鳥たちはあらかじめ卵を多めに産み育て、その中からより強い個体を選別し育てます。選別から漏れてしまった雛は親や兄弟同士の闘争で巣から落とされたり、親鳥から餌をもらうことができずその命を終えます。しかしその命は無駄になることはなく、他の生き物たちの糧となり命を繋いでいきます。
カラスやトビに食べられてしまうなんて可哀想だ、と思われるかもしれません。しかしカラスやトビ達もまた雛を育てるために一生懸命生きています。命が命を繋ぐのです。それは生態系という大きなサイクルの中で循環する必要な役目でもあります。
カルガモの雛たちが全員大人になったらどうでしょう。鴨川はカルガモだらけになっているでしょう。そうならないのは雛の一部が誰かの命に引き継がれたからです。
人と野生動物はいわば同じ地に住むご近所さん、隣人です。適度な距離を保ってこそ、それぞれの生活が良好に保たれるもの。助け合いは必要ですが自然の摂理で起こる事象については干渉しすぎてはいけないのです。
「雛を見殺しにしてしまったかもしれない」とご自身を責められる方がいらっしゃいますが、決してそうではありません。手を出さず見守ること、それも大切な手助けのひとつです。
いきもの達のためにも我々人間のためにも、良い距離でお付き合いしていきたいですね。
野生鳥獣救護センター みやがみ