救護センターブログブログ

2020年9月2日(水)8月の救護センター

8月はメジロ,オオルリ,キビタキの持ち込みがありました。
  
3羽とも軽症だったので,短い期間で放野できました。

受付を断った事例もありました。
まだ目も開いていないムササビの乳獣です。
 (参考写真)

救護センターはケガや病気で弱った野生鳥獣を扱う救急病院。
ケガでも病気でもない乳獣やヒナは,対象外となります。

やむを得ずムササビの乳獣を扱った時のことを,お話ししたいと思います。

ムササビはまだお母さんからおっぱいをもらう月齢で,
目も開いていませんでした。

人肌に温めたドッグミルクを与え,濡らしたガーゼで糞尿を促し,大きくなるにつれて離乳食を与え,葉っぱやドングリも食べさせ,短い距離ながら滑空の練習をし,それなりに育ちました。

しかし世間知らずです。ムササビとして野生で生きていく知恵がありません。
そんな子を,どこに放野できるでしょう。
拾った場所に放しても,そこの土地勘がありません。
ねぐらを見つけることも困難です。
たとえ親ムササビがいたとしても,何か月も離れていたので,我が子とは認識してもらえません。縄張りに入り込んだ侵入者の扱いです。

放野を見学したことがありますが,ムササビは初めて見る山の景色にパニックとなり,係員さんにしがみついて離れませんでした。
乳獣を人の手で育てて野生に戻すことは,こういうことなのだと思い知りました。

ムササビの乳獣が落ちていたら,木の洞にある巣に戻すしか方法はありません。

巣に戻せないので自分で育てる,とおっしゃる方もおられます。
一時的な保護と考えておられる行為を止めることはできないので,この場を借りて,アドバイスをお伝えしたいと思います。
放野の際には,ムササビを連れて何日も山に通い,徐々に山での暮らしに馴らしてあげてください。
ムササビが夜行性の動物であることも,ご配慮いただきますようお願いします。

                               救護センター担当 吉川