生き物・学び・研究センターブログ

2023年8月1日(火)(チンパンジーのお勉強)ジェームスの場合

前回、チンパンジーのコイコについて詳しくお話ししたので、今回はジェームスについてお話しします。

最近、大人のチンパンジーたちは、あんまり勉強部屋にやってこないのですが、この日はジェームスが不思議とやる気を出していました。

カメラのある窓の近くでは、ロジャーとタカシが遊んでいます。

後ろでは、ロジャーがタカシを相手にドタバタと遊んでいても、自分の勉強を続けていました。(いつものジェームスなら、一緒になってロジャーと遊んでしまうのですが、この日は違いました)

ジェームスは、1から12までの数字の順番を覚える問題を長く続けています。あと一歩のところまで行っては、しばらく勉強に来ない間に成績が下がってしまってやり直しになってしまって、もう3年以上も進歩が止まっていました。

ニイニも勉強にあきて、ロジャーと遊びだした横で、勉強を続けるジェームス(中央、奥)と、コイコ(左)。

(ここから、昔の話)

ジェームスが京都市動物園に来たのは、2010年の11月でした。

<ニュース> 新たに加わったチンパンジーを11/18から公開します (京都市動物園HPより)

元々、コイコやタカシとは、熊本県にある京都大学の施設(現・京都大学野生動物研究センター 熊本サンクチュアリ)で顔見知りだった個体で、タカシやコイコが京都にやってきてから1年8か月後に、繁殖のための借り受け(ブリーディング・ローン)で来園しました。

すごく「男(オス)らしい」との評価だったのですが、いざ来てみたらすごくおとなしくて、メスのコイコにも遠慮がちで、とても繁殖行動どころではありませんでした。その後も観察を続けた結果、ジェームスが京都市動物園の群れに馴染むのに時間がかかりそうだという判断をし、徐々に馴染んでもらうことにしました。

それで、その当時の群れのメンバー(コイコ、タカシ、スズミ)が参加している「チンパンジーのお勉強」にも参加することになったのです。

来園して5か月たった頃のジェームスの様子を、ブログで紹介していました。

最近のジェームス(2011年4月2日のブログ)

  

 この頃は、周りにずいぶん気をつかいながら暮らしていたようです。

この後、2013年の3月に、コイコとジェームスとの間に念願の赤ん坊が生まれました。

(「赤ちゃん公開」2013年3月3日のブログより)

このとき、コイコの胸には赤ん坊のニイニが抱かれていました。

そんなニイニが、今ではジェームスと変わらない大きさになって、ジェームスよりエラそうにしているのですから、時のたつのは早いものです。

(そして、今のお話)

勉強部屋には、ジェームスとその息子たち(ニイニとロジャー)が、勉強したりしなかったり、遊んだり遊んだり・・・

勉強を続けていたコイコも、ついにロジャーの相手になってしまいました。ジェームスはそれでも勉強を続けていました。

その後、ニイニは勉強部屋を出て行き、ロジャーの相手は再びタカシに戻りました。

再び勉強を始めたコイコ(左)と、ずっと勉強を続けているジェームス(奥)

そして、勉強時間の終わりごろ、みんな出て行ってしまった勉強部屋でにひとり残ったジェームスがいました。

まだまだ勉強する気だったが、他のチンパンジーがいなくなったので、どうしようか迷っている様子のジェームス。

前回紹介したコイコと比べると、まだまだ若いジェームス(1993年5月生まれなので、今年で30歳)。機会は少なくなるかもしれませんが、勉強の様子をお伝えしていきたいと思います。

Youtubeの京都市動物園公式チャンネルでも、ジェームスの様子を動画で紹介しています。

(チンパンジーのお勉強)ジェームスの場合 

あんまり見れない、勉強するジェームスの様子を見てみてください。


田中正之