生き物・学び・研究センターブログ
2022年8月11日(木)チンパンジーのお勉強について
8月になって、「チンパンジーのお勉強」をお休みさせてもらう日が増えてきました。
チンパンジーたちのお勉強 のページへのリンクです。
これは、思春期を迎えたニイニが、成長とともに大人のオスの体格に近づいてきて、群れのアルファオス(第一位のオス)のジェームスとの関係が変化してきたからです。ニイニが小さいうちは、力でかなわないジェームスには抵抗しないか、避けるかしてきたため、表面上は平和な群れとして過ごしてきました。
でもこれは、力の弱い者は力の強い者に抵抗せず、ただ我慢することを強いられ続けることで成り立っていた平和です。抵抗する力がついてきたニイニとしては、いつまでも我慢していられないというのも理解できます。しかし、問題はニイニの攻撃が、ジェームスではなく、いちばん弱い存在である小さな子どもを連れたローラに向かうことなのです。また、群全体を巻き込む大騒ぎとなり、結局はローラがとばっちりを食うこともしばしばです。
思春期を迎えたチンパンジーのオスによって、群の社会関係が不安定になることは自然なことですし、その結果として闘争が起こることも野生でも起こっていることです。ですが、動物園の場合、空間が限られているので、弱い個体が危険を避けて逃げる場所がなく、また群れの個体数も少ないので弱い個体が固定しがちで、野生と同じだからと放置しておくわけにはいきません。飼育現場では日々変化する状況に対応して、群れを分けたり、利用できる場所を変えたりしています。
そんな中で、いつもと同じ「お勉強」ができなくなることもあるのです。チンパンジーたちにとっても、不安定な群れの状況下で「お勉強」どころではないようなので、その日のチンパンジーたちの状況によっては当日に「中止」の判断をさせてもらう場合もあります。悪しからず、ご理解をいただけましたら幸いです。
8月11日も、そのような理由で、中止とさせていただきました。
田中正之