生き物・学び・研究センターブログ

2021年6月7日(月)ケープハイラックスの耳の染色:研究のための個体識別

61日から、ケープハイラックス舎に小型ビデオカメラを設置しました。わかりにくいですが,この写真右上の白い四角のものがカメラです。

舎内から見るとこんな感じです。

何のためにこのカメラを設置したかというと、ケープハイラックスの社会関係を研究するためです。

日中ずっと動物舎に張り付くことができればいいのですが、難しい時もあります。

そこで! 観察者に代わってハイラックスの様子を記録してくれる便利なアイテムが、このカメラです。日中、ずっと動画撮影してくれています。

 

さて、そんな便利アイテムを使って研究を進めようとしているのですが、私の関心のあるテーマ、社会関係を明らかにするためには必ず行わなければならないことがあります。それが、個体識別です。

個体識別とは、私たちが友達を顔や声、色々な特徴で一人一人見分けているように、動物を一頭一頭見分けることです。例えばキリンやヒョウでは、身体の模様が一頭一頭異なるため、模様を個体識別に用います。

ただ、このハイラックス、個体ごとにわかりやすい模様がありません。さらに部屋の上部に設置したカメラからだと、(背中などに比べてまだ?)特徴のある顔を正面から捉えることができずより難しい…。若い個体はもっと特徴がなくて、さらに難しい…。

でもハイラックスに限らず、例えばネズミや鳥なども個体ごとに異なる模様や特徴に乏しく、なかなか見分けがつきません。そんな時に利用される方法が、足輪の装着や毛の染色です。

そこで今回は、ハイラックスに耳の毛の染色を行うことにしました。染色といっても、私たちが髪をカラーリングするような薬剤を使うわけではなく、油性マジックで耳の毛をぬりぬり、色(赤色)をつけました。

「あの染色は個体識別のため」と知らないと、「耳から血が出てる?」と思ってしまうかもしれませんが、個体識別のためですのでご安心ください。

染色中の様子は,確かに出血しているようにも見えますが,そうではありません。

 

サイ(写真右)は両耳,ミツヒコ(写真中央)は右耳のみを染色しています。ギンジ(写真左)は染色なし。

ハイラックスはお互いの身体を舐めたり、毛づくろいしたりすることがほぼないため、染色成分が体内に入る可能性は低く,染色による身体的悪影響はないと考えています。

今後、今回の調査から得られた結果について、少しずつお知らせできればと思いますので、ちょっと耳が赤くなったハイラックスたちを温かく見守っていただければと思います。

生き物・学び・研究センター さいとう