生き物・学び・研究センターブログ
2021年1月27日(水)1/24 動物園DEサイエンストークを開催しました。
2021年1月24日に動物園DEサイエンストーク「どうせ食べられる家畜のアニマルウェルフェア」を行いました。
新型コロナウィルス感染症予防のための,「新しい生活スタイル」に基づいた対策を立てての開催となりました。今回は,瀬尾哲也さんにZoom越しでの講演をしていただきました。
瀬尾さんは,帯広畜産大学で准教授をしながら,一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会の代表理事も務められています。
アニマルウェルフェア(※)について基本的な話から,アニマルウェルフェアに配慮した飼育管理を行っている農家を認証する,アニマルウェルフェア認証制度の取組まで,幅広くお話いただきました。
欧米ではこうした認証制度がかなり進んでいて,どの製品がアニマルウェルフェアに配慮されたものなのかということがわかるような制度が作られている国が複数あります。人が食べるための卵や牛乳,肉などから,ペット用の食品まで多様なものに認証制度が適用されているようです。瀬尾さんたちが行う,認証制度は日本では先駆的な取組です。
「食べる」という生き物の根本的な行為ですが,今では私たちの生活は生産現場から離れて,その中身はわからなくなってしまっています。現在の酪農産業では,生産性の高さが最優先されており,その弊害として高価な輸入穀物飼料が大量に必要になることや,病気の増加,糞尿や化学肥料による環境汚染などが問題となっていると言います。
アニマルウェルフェアに加えて,食の安全性など,わたしたちは消費者としてどのような食品を望むのかを改めて考えていく時代になっているのだと思いました。
動物園でもアニマルウェルフェアは課題となっています。瀬尾さんは,アニマルウェルフェアの配慮は,どのような環境でも可能で,限られた中でもどの施設でも工夫が重要だと言います。瀬尾さんのこうした姿勢に共感しながら,わたしたちの普段の活動の参考になるようなことも勉強することができました。
質疑応答も非常にもりあがり,予定した時間を超えて議論が続きました。
瀬尾さん,参加者のみなさま,どうもありがとうございました!
今回は初めてのZoom越しでの講演会でしたが,大きなトラブルもなく,無事終えることができました。今後もZoomなどオンラインミーティングシステムを利用した形式でも行っていきたいと思います。
山梨 裕美
※アニマルウェルフェア(Animal Welfare)とは,動物が生きるまたは死ぬ環境条件に関連した身体・精神的な状態を指します(World Organisation for Animal Health: 国際獣疫事務所)。また,感受性を持つ生き物としての動物に心を寄り添わせ,誕生から死を迎えるまでの間,ストレスをできる限り少なく,行動要求が満たされた,健康的な生活ができる飼育方法をめざすあり方です(一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会)。