生き物・学び・研究センターブログ

2013年12月14日(土)AZEC2013

12月9日から12日まで,AZEC2013という会に参加してきました。
AZECとは,アジア動物園教育担当者会議Asian Zoo Educators' Conference の頭文字をとったものです。
AZEC2013のホームページはこちら

「AZECは、国際動物園教育者協会(IZE)から派生して始められました。アジアのプロの動物園教育者が考えを共有し、共通の利害の話題を議論するために、2年ごとに出会い討論できる場を提供します。」
(AZEC2013のホームページ,「AZECについて」より引用)

第54回日本動物園水族館協会教育研究会との合同大会として,海ノ中道マリンワールドと,隣接するホテルの会議場を会場としておこなわれました。

基調講演では,
東京国立博物館の栗原祐司による
「博物館としての動物園・水族館-その教育的意義」
という演題で,動物園を規定するものが,現行の法制度では,1951年に制定された博物館法しかなく,中度半端な立場のままであることを話されました。

アメリカ,シカゴ市のブルックフィールド動物園のデイブ ベッカー氏は,
「21世紀の子ども、家族、自然:学際的な取り組み(Children, Families, and Nature in the 21st Century: A Multidisciplinary Approach)」
という演題で,ブルックフィールド動物園内の,子どものためのゾーン"Family Play Zoo"について話されました。2エーカー(約0.8ha)のこのゾーンで,彼らは「都市に住む子どもたちに,大人は何をもたらせるか」というテーマで,環境教育を行っているそうです。

そのデイブさんの話の中で,"Conservation Psychology(保全心理学)"というキーワードが示されました。

スライドの文章を直訳したら,
人間と(人間以外の)自然の間の互恵的関係を科学的に研究する学問分野で,とくにどのようにして自然界の保全を進めるか,その方法に焦点を当てている
ということです。耳慣れない言葉ですが,欧米では10年も前に提案されていたようです。不勉強にして,知りませんでした。

今回のAZECのテーマが「人文系と自然系博物館の研究連携」ということで,
博物館や美術館,科学館と動物園の連携によるプログラムの事例もいくつか紹介されました。
いずれも参考になる事例だったのですが,とくに国内の事例は,たぶんにイベントや企画展として行われているものが多い印象でした。博物館側は,これまで博物館に足を運んでこなかった若い世代が来てくれたことで,十分な成果だと認識されていましたが,動物園にとって,この取り組みの評価,中長期的な目標などが見えない,という指摘もありました。

私は,ポスター発表で,京都市動物園でのこれまでの研究や教育プログラムについて,お話ししました。

講演とポスター発表は2日間にぎっしり詰め込まれ,朝から夕方まで会場に詰めっぱなしのハードスケジュールでしたが,講演に質疑に,熱気あふれる内容でした。
とくに若い動物園・水族館スタッフが多く,真剣に環境教育について話しができて,疲れたけど,とても充実した時間でした。



田中正之