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2024年4月12日(金)歯の治療ができました

すでにインスタグラムで報告しましたが、今週月曜日に、ニシゴリラのゲンキの麻酔下での健康診断を行いました。

昨年11月にも健康診断を行ったのですが、前回は麻酔下でのゲンキの状態が安定せず、早めに歯の治療を切り上げたため、予定していた歯の治療を完全に終わらせることができませんでした。その後の経過も良さそうでしたが、やはり早めにもう一度麻酔をかけてきちんと治療を終えたほうが良いとの獣医師たちの判断で、今回の実施に至りました。(ゲンキの体調や歯の具合が特に悪かったわけではないので、ご心配なく…)

1月後半から以前と同様に本番に向けて毎週キンタロウとゲンキの分離とトレーニングでの注射の練習をしてきました。練習はうまく行っていたものの、前回から半年も経たないうちに、また分離と注射が果たしてうまくいくのか…きっとキンタロウには前回の記憶が残っているだろうし、前日の夕方からのゲンキの絶飲食でゴリラたちが何か勘づくかもしれない…当日、担当者はゴリラたちに勘づかれないようにいつも通りを心がけていましたが、内心いつも以上にドキドキしていました。
それでも、練習の時以上と言ってもいいほど順調にゲンキに鎮静剤と麻酔薬の2本の注射を打ち、キンタロウと完全に分離することができました。

そして、採血や心電図、血圧の計測と共に、今回のメイン、歯の治療を行いました。

採血の様子

まずは治療する歯の周りに局所麻酔をかけ、

前回と同様に、歯髄の汚れを掻き出して洗浄し…

空いた穴を専用の薬剤で埋めます。

そして最後に、レジンで蓋をしました。

今回は虫歯で歯髄が悪くなっていた上顎の両犬歯を処置しました。

さらに虫歯が悪化してぐらついていた右下顎の臼歯を1本(1本というより以前に抜ききれなかった歯の一部でした)を抜きました。

そして、以前から定期的に少量の排膿がある鼻の横に空いた穴を洗浄、消毒し、終了となりました。

排膿は、今回処置した犬歯の虫歯からくるものと思われます。皮膚に穴が開いていて少量の膿ならそこから出ているお陰で顔に膿が溜まりにくくなっているものの、今回の歯の処置により今後は排膿も無くなればいいなと思っています。

今回は、麻酔下でのゲンキの状態はとても安定していて、落ち着いて最後までしっかり治療を終えることができました。

ゲンキが問題なく動けるようになった13時前にはキンタロウと再同居。
ゲンキの姿を扉越しに見た瞬間はヒ〜ンと鳴き声を上げたものの、ゲンキのいる部屋に入ってきて、ゲンキにくっついて匂いを嗅いで…30秒ほどでなぜかゲンキのいる部屋から出て行ったキンタロウの姿には、そこにいた職員みんなが、えっ、もういいの?!と笑ってしまいました。
その後、キンタロウはゲンキのいる部屋に入ったり出たりしながら過ごしていました。

午後からは、ゲンキを中心に全員が頑張ったご褒美の果物をもらいながら過ごし、ゲンキも収容のタイミングではほぼ元通り食べていました。

今回の治療は、ヒトの虫歯治療と同じ方法です。この治療がどこまでゴリラにも有効なのかはこれから経過を見ていかなければわかりませんが、今ゲンキの歯に対してできることは全てしてもらったと思います。
これからできるだけ長い期間、ゲンキに歯の問題が起こらず、麻酔をかける必要がないことを心の底から祈っています。

これまでもそうでしたが、ゲンキの分離という嫌な思いをしたにも関わらず、オスたち、特にキンタロウとモモタロウは当日も翌日も担当者にいつもと同じように、甘えたり遊んだりして接してくれました。ゲンキも、当日の夕方もいつも通りやる気満々でトレーニングをしてくれましたし、注射を打つ時の「肩を見せて」という指示にも応えてくれました。
担当していれば、時にゴリラたちの嫌がることをしなければいけない場面が出てきてしまいます。やりたくないのが本心ですが、避けられない場面があることも事実です。こういう時のためにも日頃からゴリラたちと良い関係を築いておくことが大切だと感じますし、担当者を嫌わずにいてくれるゴリラたちには本当に感謝しています。そしてこれからもゴリラたちに信頼し続けてもらえるよう、努力を続けていきたいと思っています。

ニシゴリラ担当 安井