飼育員ブログブログ
2024年4月9日(火)電柵から学ぶこと ~電気を流す意味~
リス・ムササビ舎や野鳥舎に設置した電柵について、連続記事として解説しています。
(これまでの記事:①・②)
野生動物の存在に驚いてムササビや鳥たちが頭を打たないよう、
動物舎に野生動物が触れないための対応策を取ることを決めた動物園職員たち。
その方法として「電柵」を選択しました。
では、「電気を流す」理由は何なのでしょうか?
そもそも電柵は、
農耕地周辺に設置することで野生動物の侵入を防ぐ「防護柵」の一種です。
「防護柵」には大きく分けて「心理柵」と「物理柵」の2種類が存在し、
電柵は「心理柵」に分類されます。
「心理柵」は、その存在によって何かを経験し柵を回避するようになる野生動物の心理を利用した防護柵、を指します。
電柵の場合、電線に触れた野生動物を軽い電気ショックで驚かします。
電気ショックを経験した野生動物は、電線に近づくことを嫌がるので、
柵内への侵入を防ぐことが出来ます。
ちなみに「物理柵」は、ある程度の頑丈さ・高さを兼ね備えた強制的に出入りを防ぐ防護柵、を指します。
当園のホンシュウジカとツキノワグマの間の園路に展示している「防鹿柵」がこれに該当します。
園内に設置している防鹿柵
(こちらは展示物としてホンシュウジカ舎とツキノワグマ舎の間に設置しています)
電柵は、設置が簡単で、価格も近年安くなってきています。
ただ、電気が流れないことには意味がありませんし、対象動物に合わせたワイヤーの高さ調整も必要です。
また基本的には地表付近にワイヤーを設置するので、
上方からの侵入経路に対しては別途対応しなければなりません。
そこで動物舎周辺の植栽を手入れすることで、
ワイヤーの邪魔になる雑草や、侵入経路となり得る枝葉を取り除きました。
また小型動物を対象としたワイヤーの高さ調整も行いました。
そんなこんなで死亡事故からだいぶ時間が経ってしまいましたが、
2024年3月に、リス・ムササビ舎と野鳥舎への電柵設置が完了しました。
ご心配いただいたお客様方には、改めて感謝申し上げます。
ありがとうございました。
リス・ムササビ舎/野鳥舎担当 星野