飼育員ブログブログ

2023年11月30日(木)フサオマキザル第1位オスの交代

ちょうど1か月前の10月30日、フサオマキザル舎で大きな闘争がありました。
第1位オスの交代に関わる闘争で、今まで10年以上第1位だったトンキチと、その弟カンタとの間で起こりました。

当園には8頭のフサオマキザルがいます。
父親トンキチ、母親シゲコ、その子供たちが上から、タマキ、ツヨシ、ヒトシ、ナギサ、ヒナタ。そして、子供たちの叔父で、トンキチの弟のカンタです。

10月30日は休園日でした。お昼休み明けにフサオマキザルを見に行くと、顔にかなりの傷を負い、今までの貫禄はどこへやら……血まみれのトンキチが目に入りました。
一瞬、何が起こったのか理解できないほどでしたが、急に闘争は起こるのだと実感した瞬間でもありました。
トンキチと闘争した相手はすぐにわかりました。体に数か所傷を負い、少し血がついた個体がカンタしかいなかったからです。
トンキチとカンタは対角線上に距離をとり、全く近付く様子はありません。
群れの他の個体もソワソワしていました。
特に末っ子のヒナタは珍しくシゲコの背中にのり、たまに乳を吸っていました。落ち着かなかったのだと思います。

闘争の際に負ったトンキチの怪我が酷かったため、急遽オペを実施。鼻の骨が見えるほどの裂傷、唇の裂傷、指を一部失う怪我、他にも数か所擦過傷を負っていました。
獣医師にきれいに縫合してもらいましたが、現在までに他の個体が触ったり、自分でいじったりしたため、一部縫合は取れてしまいました。

麻酔下で治療中のトンキチ

カンタとトンキチが同じ群れで過ごすのが良いのか、別で過ごすのが良いのか悩みましたが、当園の飼育スペースの関係上、可能なら同じスペースで過ごして欲しいと思い、翌日から全頭同居を行いました。
結果として、群れの他の個体にとってはトンキチとカンタが変わらず同じ群れにいたことは環境変化が少なかったため、安心できて良かったかなと思います。

闘争以降、一度もトンキチがカンタに向かっていく様子はなく、第1位オスはカンタになったかな…と思いましたが…。
今までトンキチを慕ってきた群れの他の個体はしばらくの間トンキチを慕い、カンタがディスプレイをすると怒ったり、トンキチを追いかけるとカンタに飛びかかったりしていました。
群れが落ち着かなかった11月初旬は小さな闘争が何回も起こり、トンキチやカンタだけでなく、他の個体も怪我をして投薬治療を行うこともありました。

今日までの間にフサオマキザルの群れはだいぶ落ち着いてきました。
要因はいくつかあると思いますが、1番大きいのはシゲコがカンタに寄り添うようになったことかなと思います。
シゲコがカンタに寄り添うということは第1位のオスがカンタになったということでもあるかなと思うのです。
大きい闘争で怪我を負ったトンキチはカンタに第1位の座を譲ったように見えます。
カンタはディスプレイの回数がかなり増え、体も毛を膨らませるせいかひと回り大きくなったように見えます。大きな闘争以降、カンタに必要だったのは、群れの個体に認めてもらうことだったように見えましたが、シゲコが寄り添う姿を見ると、ついにその群れの信頼も少しずつですが獲得しつつあるのかなと思うのです。

とはいえ、夜間フサオマキザルが過ごす部屋は決して広いとはいえず、何か争いが起こっても逃げられる十分なスペースがないのが現状です。
夜間、人の目がないときに何かが起こってもどうにも出来ないため、夜間はカンタを1頭で管理し、他の個体は群れのまま管理することにしました。
夜間別で過ごしても、翌日には群れに戻れることを理解したのか、カンタが落ち着かない様子などはありませんのでご安心ください。

最近のカンタ

今後、気候の良い季節はグラウンドを開放できるので、グラウンドと寝室を行き来できる状態にして24時間全頭同居の状態で管理し、寒い時期は低体温症などのリスクを避けるために、カンタを分離した状態で管理していこうと思っています。

現在、カンタは首の後ろに瘡蓋があり、トンキチは右手をあまり使わずに過ごしていますが、他の傷は治りが良好です。
現在負っている怪我も時には投薬治療などを行いつつ、経過を見ています。

かなりレアな第1位オス交代の瞬間を目の当たりにしたのは貴重な経験でしたが…
どうかこのまま争ったり、怪我をしたりしないで、平和に過ごして欲しいと願うばかりです。

そして、新しく第1位オスとなったカンタが、これからどう行動するのかを注意深く見ると共に、トンキチが群れの中で平和に過ごしてくれることを願っています。

今日のトンキチ

フサオマキザル担当:櫻井