飼育員ブログブログ

2023年11月20日(月)ゲンキの健康診断

定期的に行っているニシゴリラのゲンキの麻酔下での健康診断を11月13日に行いました。今回は前回から約2年ぶりでした。
2カ月ほど前から、キンタロウとの分離と注射のトレーニングを毎週休園日の朝に行いました。

当日も、トレーニングの時ほどスムーズとはいきませんでしたが、無事ゲンキに手打ちで麻酔薬を注射できました。キンタロウもやはり完全に分離した際には混乱していましたが、2年前と同様、モモタロウ・ゲンタロウと3頭になると静かに待ってくれていました。

今回は、通常の採血や心電図測定、胸部レントゲンなどに加えて、初めて歯科用のレントゲン撮影を行いました。これにより、今までよりも詳しく歯の状態を知ることができます。今回、レントゲン撮影用の機械を、今(こん)動物総合事務所さんにお借りしました。おかげで今までのように後で現像して確認するのではなく、その場で画像を確認することができました。ご協力頂き、ありがとうございました。

胸部レントゲン撮影の様子
歯科用のレントゲンでの撮影の様子

右上の臼歯に割れてぐらついている歯が3本ほどあったため、抜くことになりました。
さらに、左上犬歯の歯髄の洗浄も初めて行いました。この歯は、以前から虫歯になっており、歯茎から出ている部分の歯はすでにないのですが、歯根が深くぐらついてもいないので、抜くことができません。そこで、事前に市内の歯医者さんにアドバイスを頂き、人間で行われている虫歯治療を実施しました。完全に同じにはできなかったのですが、抜歯以外の選択肢が出来たという点で前進したと考えています。お忙しい中、来園しアドバイスを下さった金田歯科医院の金田一晃先生、金田恵理子先生ありがとうございました。

歯髄の洗浄の様子1
歯髄の洗浄の様子2

おそらくこの虫歯が今年の夏にゲンキの頬が腫れた原因ではないかと考えています。

今回の健康診断に向けて、情報収集や歯科医とのやり取りなどをしてくれた獣医師たちに担当者としてはとても感謝しています。ただ、ゴリラよりも個体数が多くいろんな症例もあるチンパンジーでも、歯の治療というのはとても難しいようで、こうすれば絶対に治るという治療法はないのが現状のようです。
完治というのは難しいかもしれませんが、少しでも進行を遅らせる努力をこれからもしていければと思っています。

ゲンキは抜歯で出血もあった後にも関わらず、担当者の心配をよそに、麻酔から覚めて数時間後には普段通りの葉っぱなどの餌を食べていました(^^;ゲンキのたくましさには本当に感心するばかりです。

覚醒後に小さめに切ったリンゴを食べるゲンキ
約4時間ぶりに再会したゲンキとキンタロウ

覚醒してきてキンタロウがいないことに気づいていたとは思いますが、とても落ち着いていました。

キンタロウはいつもと違う匂いがしたのか、ゲンキの背中をしきりに嗅いでいました笑
この日は少し寒かったこともあり、ゲンキはグラウンドに出たそうでしたが、我慢してもらいました(^^;;

血液検査などのその他の検査結果は、経過観察の点はあるものの大きな異常は見られませんでした。年齢も上がってきているので、体調変化が気になるところですが、歯以外は健康体のようでとりあえず安心しました。

今回初めて、抜歯以外の方法でも歯の治療を行うことができたので、今回の経験をまた次回の健康診断時にも活かしていきたいと思います。

ニシゴリラ担当 安井