飼育員ブログブログ
2022年8月27日(土)【論文掲載】キリンは樹皮も食べる。
当園で行っているキリンの採食エンリッチメントの活動が、
海外の研究雑誌に掲載されましたので、報告させていただきます。
(エンリッチメントって何?という方はこちらをご覧ください。)
みなさんご存じの通り,キリンは木の葉を食べる動物です。
このイメージを覆す研究結果とも言えるかも(?)しれません。
当園では、野生本来の食生活を実現するために、1日に約20kgの枝を与えています。
しかし、体の大きなキリンの必要なエネルギーを補うためにはこれだけでは足りず、
乾草などの代替品も与えています。
特に冬は多くの葉が落葉してしまうため、これらの代替品の供給はさらに重要となります。
ここで野生のキリンの食生活に目を向けると、彼らの主たる食物はアカシア(マメ科の木)の葉ですが、
これらが食べられない時には、樹皮や草の類(たぐい)も食べることが明らかとなっており、
意外と多様な食生活をしていることが明らかとなっています。
この野生での研究を踏まえて、当園でのキリンの採食行動を観察してみると、
景観樹が生い茂る春から夏にかけては、樹皮の利用頻度はあまり高くはありませんでしたが、
景観樹の葉が変色し、落葉し始めると、乾草の採食だけでなく、
給与している枝の樹皮採食行動も増加することが明らかになりました。
(Okabe et al, 2022より改変)
つまり、特に葉のなくなる季節に樹皮を給餌することによって、
キリンの野生での食生活の再現につながる可能性があると考えられました。
本研究は、アメリカの動物園水族館協会が発行する研究雑誌「Zoo Biology」に掲載されました。
本研究にご協力いただいた皆様に深く御礼申し上げます。
Okabe, K., Fukuizumi, H., Kawamura, A., Kase, C., & Uetake, K. An investigation of browsing enrichment, especially non‐leaf foraging, on giraffes (Giraffa camelopardalis reticulata) at Kyoto City Zoo in Japan. Zoo Biology. https://doi.org/10.1002/zoo.21726
樹木採食エンリッチメントは、動物園で飼育されているキリンの動物福祉向上の手段として、種特異的な行動の発達に役立つ可能性がある。本来、キリンは木の皮など樹木を食べる動物であるが、樹木採食エンリッチメントとして葉以外の餌をどの程度食べるかはあまり調べられていない。そこで、葉以外の採食の有効性を調べるため、日本の京都市動物園にいるキリン3頭を2019年5月から2020年2月まで228時間観察した。瞬間サンプリングと合わせて、樹木採食(景観樹またはエンリッチメント枝)と採食部位(葉、小枝、樹皮)を1-0サンプリングにより記録した。エンリッチメント枝の葉での採食行動には、1頭を除き、落葉期のキリンの採食行動に有意な変化は見られなかった。また、反芻行動などにも2期間で有意な変化は見られなかった。植生採食(枝と下層植生)は1頭を除いて有意に減少したが、乾燥採食(乾草とヘイキューブ)は落葉期の全個体で有意に増加した。また、落葉期にエンリッチメント枝の非葉部(小枝や樹皮)の採食行動が有意に増加した個体もいた。このことから、キリンは一部の樹種において、落葉期の葉の喪失を補うために樹皮や小枝を採食しており、これは木の葉の代わりに干し草や干し草キューブを採食しているのと同様であることが示唆された。
キリン担当 オカベコウタ