飼育員ブログブログ

2021年11月23日(火)大人向けの“濃いぃ”プログラム「一日動物園体験」

京都市動物園は来年で120周年を迎えます。
「一日動物園体験」は100周年を機に始まった大人向けのプログラムで,今年で19年目になります。

現在,年に2回実施していますが,「動物園体験」という名のごとく,動物園を深く知ってもらうためのプログラムですので,実施する内容は様々です。
今回は「エンリッチメント」に的を絞って濃いぃ内容で実施しました。

20名の定員ですが,毎回多くの応募があり,定員を超えるので抽選となります。今回は54名の応募がありました(多い時は100名近いです)。

さて,今回のテーマ「エンリッチメント」とは…?
“動物が精神的・肉体的に充分健康で,環境とも調和している状態を実現する具体的な方策”といったところでしょうか。
つまり今回は,“飼育している動物たちのためにいいことを考え,実施してみよう!”という内容です。

そのためには,まずは講義からスタートし,これから行うエンリッチメントについて知ってもらいます。

堅苦しい感じがしますが,この講義がとても役に立ったと参加者からの嬉しい感想をもらいました。

エンリッチメントの基礎がわかったところで,いよいよ実践です。
6つのチームに分かれて,各動物の担当者と一緒に作業をしました。

ヤギ・ウサギのチーム

ヤギ・ウサギのチームは,編んだネットの中に干し草を入れて吊るしたり,地面に転がしたりしました。
ヤギやヒツジは大喜びで食べ始めました。
地面に置くだけですと,あっという間になくなってしまいますが,これなら時間をかけて食べることができます。

チンパンジーのチーム

チンパンジーは器用にホースや枝の中にあるエサを取って食べていました。それぞれ,どうやったら早く簡単に取り出せるか,頭を使います。

アムールトラのチームは丸太を立てました。

この丸太は,立てる前に穴を開けました。その穴にエサを詰めたり,貼り付けたりして,エサを得るために日頃見られない行動を引き出す作戦です。

アナグマのチーム

アナグマのグラウンドに土を掘り,ここに園内で採取した落ち葉を敷き詰めました。中にエサを隠すとそれを探すために掘ったり,ふわふわの落ち葉の上でお昼寝したり…そんな行動を想像しながら。

これはジャガーのグラウンドです。設置しているものは,参加者が消防ホースを編み上げて作った物で,この間に肉を詰めて天井から吊るしました。ジャガーの強靭な顎の力でくらいついて遊ぶ姿も期待しました。

フサオマキザルもとても賢い動物です。これは消防ホースをキューブ型にして,中にあるエサを取り出そうとしています。

ハイラックスにはネットでキューブを作り,牧草を入れました。
※ハイラックスについている赤いマークは,個体識別用のマーキングです。

この後,他の動物舎を見学して,どのようなエンリッチメントが行われているのか探しに行きました。
これで午前中はおしまいです。

さて,午後からは…

飼育員に質問しながら新しいアイデアを考えます。
そして,考えたアイデアをプレゼンテーション

みなさんのアイデアのプレゼンは,動物園スタッフが後ろで聞き,使えそうなアイデアは採用していくとのことでした。
せっかくなので,このプレゼンに参加できなかったスタッフにも見てもらおうと,動物園事務所の廊下にも張り出しました。

一日中,頭も体も使い,本当にみなさんお疲れさまでした。
みなさんの感想文では,とても有意義だったという感想が多く本当によかったです!

「動物園の体験」というと飼育体験を想像する方が多いかもしれませんが,動物園は多岐にわたる仕事をしていますので,その中のほんの一部ですがいろいろなことをみなさんに体験してもらい,動物園をもっと深く知ってもらいたいと思います。

機会がありましたらみなさん応募してみてください。
(抽選が当たるかどうかは運しだいです…^^;)

             種の保存展示課 タカギナオコ