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2021年10月2日(土)獣医室だより133 ツツドリの烏口骨骨折

ツツドリはカッコウに似た夏鳥です。
日本から南に移動するこの時期,野生鳥獣救護センターに一羽のツツドリが持ち込まれました。
触診では明らかな骨折は確認できなかったものの,うまく飛ぶことができません。

X線で撮影したところ,左烏口骨を骨折していることがわかりました。
烏口骨は,叉骨,肩甲骨と鳥の肩回りを構成する大切な骨。
渡りが終わる時期までに飛べるようになるか,厳しいタイミングでした。

烏口骨の骨折は整復することが難しく,しばらくの間安静にさせて癒合することを期待します。
数週間後にX線で癒合度合いを確認しましたが,残念ながらきれいに元の位置には戻りませんでした。
ところが,ある日体重測定のために箱から出すと,とても元気に羽ばたきました。
試しに広い部屋で放したところ,問題なく飛翔することができます。
野生復帰可能と判断し,準備を整えて放野しました。

烏口骨骨折から回復した個体が,渡りを成功させることができるかは未知数な部分があります。
しかし,渡りの時期や長期間飼育することによる羽へのダメージなどを考え,このタイミングでの放野を行いました。
判断の難しい野生復帰ですが,今後も一羽でも野生に戻れることを願い,続けていきたいと思います。

土佐