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2021年9月9日(木)獣医室だより129 ヤギの歯の脱落
動物は種類ごとに正常な歯の数が決まっています。
ヒトであれば片側の歯の数は,切歯(J)が上下4本,犬歯(C)が上下2本,前臼歯(P)が上下4本,後臼歯(M)が上下6本であり,(J2/2,C1/1,P2/2,M3/3)というように表示します。
同様の方法でヤギの歯式を表すと,(J0/4,C0/0,P3/3,M3/3)または(J0/3,C0/1,P3/3,M3/3)となります。
標記の方法が2種類あるのは,ヤギの下顎切歯の一番外側の歯を,切歯とみなすか犬歯とみなすか考え方の違いがあるから。
発生学的には犬歯と考えることが正しいらしいですが。
さて,ある日,ヤギのハルミの下顎左側の歯がぐらついていると報告がありました。
ヤギの歯は指で力をかけると1-2mm動くのが正常です。
しかし,確認してみると,下顎左側第3切歯が取れそうなほどにぐらついていました。
X線撮影の準備をしたり,書籍を調べたりしているうちに,歯が落ちてしまったと報告が。
出血などは見られなかったので,歯科用抗生剤軟膏を注入して様子を見ることにしました。
ヤギの下顎乳切歯は,出生後2歳から,概ね1年に1本ずつ永久歯に生え変わっていきます。
ハルミは4歳数箇月で,年齢+1本のルールに従えば全ての歯が永久歯に生え変わっているはず。
実際に,全ての歯が永久歯であることを確認しました。
そもそも,中央の切歯から外側に向かって生え変わっていくので,このタイミングで第3切歯が生え変わる可能性はほとんどありえません。
いずれにしても,異常な歯の脱落だろうということでX線撮影等を行いましたが,特に大きな異常はみられませんでした。
健常なヤギでも,加齢とともに歯肉が下がってきます。
また,よく砂を噛むような環境にいたり,強い力がかかると,若い個体でも歯の脱落がみられます。
ハルミはまだ他の歯があるので問題なくご飯を食べることができますが,他の歯がなくなってしまわないように,注意したいと思います。
土佐