飼育員ブログブログ

2021年8月11日(水)「トラのエンリッチメントにトライ!!」が論文になりました。3

もう2-3年前ほどのブログでの話ですが,
京都大学野生動物研究センターの院生さんと共同で
環境エンリッチメントの研究を行っていました。
(環境エンリッチメントって??という方は,こちらをクリックしてください。)

上記の研究では,
卒業研究など,観察に訪れる学生に協力していただいて撮影した動画と静止画から
環境エンリッチメントに関わる行動を調査することができないだろうか
ということを調査を行いました。
その結果,環境エンリッチメントに関わる行動の確認することができ,
目的の行動が出ていることがわかりました。

今回は,動画と静止画に限らず,
【エンリッチメントアイテムの増加・複雑化】は実際に【動物の行動を多様化させるのか?】
ということを焦点に麻布大学の学生と共同で実験,観察を行いました。
なお,今回は↓↓の写真のような段ボールによる採食エンリッチメントの複雑化に着目しています。

青草を入れたり…
肉汁氷を入れたり…

観察の結果,
【採食エンリッチメントのアイテムが複雑化】すると
【発現する行動が多様化】することが明らかとなりました。
またこの結果は,利用しなかった場合を抜いて,
【実際に利用した】ことだけに注目すると,より【はっきりと増加】しました。

ただし,各個体が利用する採食エンリッチメントの複雑さや種類は異なりました。
そのため,対象とする個体が利用するよう,【個体に合わせた】環境エンリッチメントを実施することで,
より効果的に行動の多様化を促すことができると考えられました。
(ただ漠然と実施するのではなく,個体に合わせて環境を変化させることが重要ということです)

上記の内容は,日本動物園水族館雑誌に掲載されました。

この場をお借りして,
実験にご協力いただいた皆様に厚く御礼を申し上げます。

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岡部光太,松永雅之,滑川芽衣,植竹勝治 (2021)
環境エンリッチメントの複雑化と行動レパートリー調査に関する調査 
  -環境エンリッチメント簡易評価を目的として,アムールトラを例に-. 動物園水族館雑誌63(1): 14-19.

[要旨] 環境エンリッチメントの簡易評価のため,第一著者は先行研究で行動多様化に着目し,動画等記録から,提示アイテムと行動の各種数に正の相関関係を確認した.本研究では,関係の検証のため,実験的に提示アイテムと発現した行動の関係を調査した.結果,アイテム数の増加に伴い,行動種数は有意に増加した.一方,アイテム利用割合や行動に個体差が見られたため,飼育記録等の併用により,効果的に実施できる可能性が考えられた.

キーワード:環境エンリッチメント,評価,アムールトラ,行動多様化,動物福祉
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元アムールトラ担当  オカベコウタ