飼育員ブログブログ
2021年5月30日(日)ケリの展示について
野鳥舎では,傷ついて野生に戻れなくなった個体が生活しています。
ケリは2016年に保護され本園にある野生鳥獣救護センターへ。そして,片目を失うケガをしていたことから野生復帰は難しいと判断し,この野鳥舎へやってきました。
2021年4月1日,今まで問題なく生活していたこの野鳥舎内の枝に挟まり,動けなくなっているところを発見。すぐに処置をしましたが,左脚のかかとから下を失うケガをしてしまいました。
朝の生存確認時は普通に生活していたので,目を離した1時間弱の間の出来事でした。正確なことはわかりませんが,何かに驚いて飛び上がり,枝に引っかかってパニックになったのか発見時には左脚を支点としてぐるぐる回ったような感じでした。
ケガ当日は座ったまま。何かを食べることもありませんでした。
私はヒツジの骨折の際,最初は立てたものの,ずっと座っていたことで他の脚も悪くなっていったことを思い出しました。
ヒツジとケリではかなりの差がありますが,右脚も悪くなったらどうしよう…と思い,ケガ当日は時間が許す限り手で支えて右脚を伸ばすようにしました。
それでも立てなければ,自分で食べられなければ,生活していくことは難しく,最悪の事態も想定してこの日,私は帰りました。
翌日もあまり状態は変わらず。左脚は冷たくなり(壊死したようでした),脚の付け根(膝部分)もかなり腫れてきました。しかし,ケガから3日目,自分で餌を食べ始めました。そこで壊死してしまった左脚のかかとから下を断脚する処置を行いました。
ケガから4日目の朝様子を見に行くと,大好きなミルワームは完食し,なんと一本脚で立っていました。「立っている!」「食べている!」信じられない気持ちでした。
自分で食べ,片脚でも立ったり座ったりするものの,右脚への負担は大きくなることから,右脚に新たな疾患ができるのではないか。排泄に問題があって体が汚れてしまうのではないか。心配する要素は沢山ありました。
しかし,私たちの心配をよそにケリはたくましく,片脚でも立ったり,座ったり,羽繕いをしたり,排泄をしたりしています。
獣医の懸命な治療の甲斐あって展示に戻れるまで復活したケリ。
しかし,再びケガをしてしまうリスクを考えると今までと同じ生活に戻るのはまだまだ難しいと思います。今後のケガを防ぐため,挟まる物理的な要因をなくすためにはすべての植物を取り除く必要があると考えています。しかし,それは同居する他の鳥たちの隠れ家や止まり木を奪うことになります。
そこで,ケリには再びケガをしてしまうリスクを避けるため,少し狭いスペースで生活してもらうことにしました。治療はもちろん,福祉評価を継続的に行い,ケリ自身の動物福祉にも配慮していきたいと思っています。
少し見にくい場所での展示ですが,たくましく生きるケリを温かく見守って頂けると助かります。
野鳥舎担当:櫻井