飼育員ブログブログ

2020年10月11日(日)獣医室だより082 フサオマキザルの眼下膿瘍

「目の上のたんこぶ」という表現があります。
言った人はイライラしているんだろうな,と感じますね。
では,「目の下の瘤」ではどうでしょうか。
この言葉を聞くと,私はちょっとドキッとします。

フサオマキザルのタマキの目の下が膨らんだという報告があったのは8月。
診察室に搬送し,麻酔下で診察します。
顔の周辺を確認したい場合のほとんどで,全身麻酔が必須です。
動物は顔を向けてじっとしてくれないため,そして,顔の治療は噛まれる危険が非常に高いためです。

診察の結果,眼の下に膿が溜まっていることが分かりました。
さて,その次に確認すべきは口の中。
折れた歯や虫歯から感染し,目の下まで膿を作ることがあるためです。
根尖膿瘍というこの病気,学生の時初めて見た症例写真が衝撃的で,私は少し苦手としています。

幸いにして口の中には異常がないことが分かりました。
皮膚にできた膿瘍は,まず切開して膿を出すのが原則。
更に消毒液と水で何度も洗浄し,膿を可能な限り除去します。
この時どれだけしっかり洗浄するかで,治癒速度が随分違います。

麻酔の醒めも問題なく,即日で展示室に戻ったタマキ。
その後目の下が腫れることはなく,切開部も綺麗に治っていきました。
眼の上でも下でも瘤はないに限る,と思っています。

土佐