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2020年9月28日(月)獣医室だより080 ホロホロチョウの開嘴呼吸

現在京都市動物園では,2名の獣医師が交替で治療を担当しています。
当たり前ですが,飼育担当者にとって動物の診察はお金がかかりません。
怪しい症状が出たら早めに相談し,すぐに診察を受けられるのが強みです。

当園では5羽のホロホロチョウを飼育しています。
そのうち1羽が,夏に頻繁に口を開いて呼吸する様子が見られました。
この行動は開嘴(かいし)呼吸あるいは開口呼吸と呼ばれます。
以前ペンギンの記事でご紹介したとおり,鳥類が体温を下げたいときによくみられる行動です。
一方,呼吸器疾患の場合にも同様の症状が見られるため,一度精査する必要がありました。

夏の鳥類の捕獲は,動物が走り回り体温が急上昇するリスクがあります。
できるだけ涼しい日に,手早く捕獲するのがポイント。
すぐに涼しい診療室に搬送し,落ち着かせた後に健康診断を行いました。
血液検査でカルシウムの数値が高い以外には特に異常は見られません。
X線検査でも肺や気嚢に異常は見られず,即日退院となりました。

下の写真は撮影したX線写真。
血中カルシウム濃度が高い理由が隠されています。
さて,何でしょうか。

正解は,卵を形成しているから,です。
卵の殻を作るためにカルシウムが必要なので,血中の濃度が高くなっているのでした。
形成された卵は,1日以内に体外に出ます。
この個体も,検査結果を待っている間に卵を産んでいました。
卵はお代として担当獣医がいただきました…
などということはなく,飼育担当者に丁重にお返ししました。

土佐