飼育員ブログブログ
2020年5月10日(日)【New!】アフリカの草原の相関図が論文になりました!
北里大学の動物行動学研究室と共同で行った,
キリンとグレビーシマウマの混合展示についての論文が出版されました。
観察を行ってもらったのは,2017年の春と秋で
その間にグレビーシマウマの出産があり,その前後での比較を主に行いました。
混合展示には飼育管理上での利点と課題がともに存在します。
利点は,「飼育スペースの拡大」と「社会エンリッチメント」です。
野生と比べて,動物園の飼育スペースは限られています。
同じ空間に飼育することで,別々に飼育する場合よりも広い空間で飼育することが可能です。
(ルームシェアタイプの賃貸物件を想像いただくとわかりやすいかもしれません。)
もう一つの社会エンリッチメントは,お互いに社会的な関わりを持つことで,
単調な飼育環境に変化をもたらし,お互いに刺激しあいながら生活することができるというものです。
(同じ屋根の下でいろんな人が一緒に生活しているような感じでしょうか。)
しかし,後者の社会エンリッチメントには課題もあり,
時には他種間での闘争につながることもあります。
(一方,同種であっても相性が存在しますので,同種なら良いというわけでもありません。
皆さんも好きな人,嫌いな人いますよね?)
今回の観察では,グレビーシマウマの出産前には
キリンからもシマウマからも親和行動(好意的な行動と判断した行動)が見られていましたが,
出産後には,グレビーシマウマの母親は,
キリンから距離をとる傾向(例えば,闘争行動や距離をとる行動)が見られました。
ちなみに,キリンは同種間で,
とても緩い社会関係を持つとされています(Saito & Idani 2016)。
その性質もあり,
当初,飼育下でもキリンは”緩く”他種とも好意的な関係を
構築できていたのではないかと個人的には考えています。
出産後に,同居を再開しても,
そのまま緩やかに好意的な関係を構築することができるのか…?と考えていたのですが,
グレビーシマウマがキリンと距離をとったのは意外な反応でした。
今回の研究を踏まえて,今後もより良い混合展示を継続できれば…と思っております。
論文の詳細は以下からご覧下さい(無料で見られます)
小倉匡俊, 近藤沙紀, 中尾小百合, 河村あゆみ, 福泉洋樹, & 岡部光太. (2020).
混合展示におけるアミメキリンとグレビーシマウマの異種間関係の出産前後での比較. 動物の行動と管理学会誌, 56(1), 8-17.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jabm/56/1/56_8/_article/-char/ja/
オカベコウタ