飼育員ブログブログ

2014年11月26日(水)サクラの熊生

サクラは親が狩猟で撃たれ,残された子グマでした。
保護されたのは1975年の春。
場所は滋賀県の旧・朽木村でした。
朽木村役場から電話があり,動物園の職員が向かうと,
そこには,机に荒縄で繋がれた2頭の子グマがいました。

その時から40年近くが経とうとしています。
ツキノワグマのサクラが,2014年11月26日朝に息を引き取りました。
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僕が知るサクラは,晩年だけです。

晩年のサクラは,腫瘍との戦いでした。
最初は乳腺腫瘍でした。見つかったのは2010年10月。
右胸に小さなしこりがあるのを当時の担当者が見つけました。
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すでに当時35歳だったサクラ。
高齢動物へ麻酔をかけることは,命の危険があります。
当時の担当者は,腫瘍と「共存」することを選び,
経過を観察していくことにしました。
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(当時お気に入りのタイヤと桜色の毛布でおやすみ中…)

2012年の夏。
長い間生活していた,「クマ舎」が取り壊されることになり,
もうじゅうワールドで新生活を始めました。
同じグラウンドをおじいさんジャガーのグランデとシェアをする生活が始まりました。
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そこでの生活が始まって1年が過ぎたくらい。
徐々に後ろ足の運びが鈍くなり,
しまいには前足のみで体を引きずって動き回るようになりました。
それもあってお尻に擦り傷ができることも増えてきました。

でも,サクラは元気でした。
グラウンドに落ち葉や藁を敷き詰めると,
後ろ足があったころよりも速いんじゃないかと思うほどの
俊敏さを見せてくれたこともありました。
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サクラの食い意地と持ち前の元気さに驚かされたものです。
 
サクラの腫瘍に変化が起きたのは,2013年の冬。
経過を見守っていた右胸の腫瘍が破裂しました。
手術の様子は以前のブログをご覧いただければと思いますが,
死亡後の解剖では腫瘍の痕跡は全くありませんでした。
当時の担当獣医様様でした。

みなさんにお伝えしてなかった部分ですが,
実は左足に別の腫瘍ができており,
その治療もあり,最近は展示ができておりませんでした。
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でも,いくら腫瘍があるとはいえ
サクラの元気さにかげりが出ることはあまりありませんでした。
休園日には,1日中グラウンドに出し,
動き回って,ごろごろして…と
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気持ちよさそうな様子が見られました。

それだけに,亡くなる前日の休園日に雨が降り,
外に出してあげれなかったのが,ちょっと心残りでした。

最近は一番調子がいいときに比べると
よく食べ,元気に動き回るサクラというわけではありませんでしたが,
餌も残さず食べきって,前日も変わらずの様子でした。
「最近のサクラ,ちょっとお疲れさんですね」と,
担当獣医と言葉を交わしていたくらいのもので,
体調を崩したサクラと比べても,
まずまず元気そうな雰囲気でした。

今でももうじゅうワールドに顔を出せば,
ワラからのそのそ出てくるサクラがいそうな気がします。
いつでも覚悟はしていましたが,
あまり現実感がないくらい,スッと旅立っていきました。

サクラを長きにわたり見守り続けてくれたみなさん,
ほんとに,ほんとにありがとうございました。
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約40年間,本当におつかれさまでした。
                ツキノワグマ担当 オカベコウタ