飼育員ブログブログ

2009年8月10日(月)コウモリ子育て日記

 7月の小川獣医の救護センター苦労話(「救護も大忙し!」)の続編です。

 例年、救護センターでは5,6月にヒナや幼獣の持込数がピークになり、狭い飼育室はてんやわんや。

 そんな6月のある日、京都駅八条口近くの路上で2頭の赤ちゃんコウモリが救護されて来ました。

 持込時の体重は3g前後といつも来るアブラコウモリ(1g前後)の赤ちゃんとしてはやや大きくなってから来たものと思っていました。

 

(到着2日目)

 2頭のうち身体が小さいほうはミルクの飲みも悪く育つのは厳しいかなと思っていたのですが、徐々に慣れ始め順調に成長していきました。

というより、どんどんどんどん大きくなって子供を抱いているアブラコウモリのお母さんより大きくなってしまいました。

 「えらいこっちゃ!ミルクや離乳食やりすぎたかなあ・・」という者や、「違う種類のコウモリ違う?」とか、「でもそんな街中でアブラコウモリ以外のコウモリっているん?」などとみんなで好き勝手に話をしていました。

 そんな親の心子知らずで2頭の子供たちはどんどんと大きくなっていきました。これはアブラコウモリではありえないと考え専門書で同定したところ、これまで日本で6例しか見つかっていない「オオアブラコウモリ」という希少種に行き着いてしまいました。

  

(種判定のための顔写真撮影)

 

(計測)

 そうなるとスタッフの扱いがVIP待遇に急変。

「どうしよう、取材が来るで!」、「今からコメント考えとかんとあかんぞ!」とみんな浮き足立ち始めました。

 でもとりあえず専門家にちゃんと鑑定してもらった方がよいとある研究施設に写真を送ったところ、オオアブラコウモリではなくヒナコウモリだと返事が返ってきました。もともと森の樹洞をねぐらにしていたコウモリなのですが、森林伐採などで彼らの住環境が破壊され、彼らの方が適応し新幹線の橋脚周辺でコロニーが観察されたりもしているそうです。悲しい気もしますが・・

 その後、VIP待遇から通常待遇に戻ったことは言うまでも無いのですが、餌のとり方訓練(彼らはエコーロケーションという超音波を使った方法で餌のありかを認識します。)もクリアし、今では大きいほうが16g、小さいほうも15gとなりました。寂しいですが、そろそろ放獣のための準備を始めないといけないと考えています。

 

(飛行訓練中!)

(餌認識訓練中!!)

獣医師 オカちゃん