救護センターブログブログ

2019年5月29日(水)花だより 09

 ツバメ
「ん? あの花はキキョウ? ちゃうわな」

京都の森にある救護センター掲示板周りに限定した植物紹介です。
見逃してしまいそうな小さな花を中心にお届けします。
 
キキョウソウ(キキョウ科)です。
植えた覚えはないけれど,いつの間にか茎が伸びています。
ここ数年で,あちこちで見かけるようになりました。

初めてこの草を見たとき,どんな花が咲くのか楽しみでした。
なのに,いつの間にか種ができています。
ん? いつ花が咲いたん? 見逃したんやろか。
不思議に思っていると,キキョウによく似た花が次々と咲きだしました。

キキョウソウはとても用意周到な植物で,先に自家受粉して種を作ります。
花は咲かず,つぼみと思っていたら,それは果実で
種がいきなりできているのです。
なので,たとえ枯れても引き抜かれても,とりあえず種はできているから大丈夫。
備えあれば患いなし! 転ばぬ先の杖!


     果実の横に穴が開き,そこから黒い種がこぼれ落ちます。

しかし,これだけでは遺伝的多様性に欠けるので
他からの花粉をもらうため,花を咲かせて受粉します。
この時,自家受粉を避けるために,
雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)という方法をとります。
先に雄しべが熟し,

花粉が出尽くした頃に雌しべの先の柱頭が裂けて,
よその雄しべの花粉を受け取れるよう待ち構えるのです。

この抜かりの無さ。おぬし,なかなかやるのう。

キキョウソウは北米原産の外来種ですが,今のところ法的扱いはないので
花の美しさに免じて,抜かずにそのままにしています。

                               救護センタースタッフ 吉川