野生鳥獣救護センター

救護センターブログ

2013年09月06日 (金)
ニホンジカの誤認保護

5月と6月にニホンジカの幼獣が5頭持ち込まれました。
季節繁殖動物のニホンジカは,ちょうど出産の時期です。


さて,巣立ち雛の誤認保護(誘拐)は,だいぶ知られてきたように思いますが,ニホンジカでも誤認保護が多いことを知っているでしょうか?

なぜニホンジカで誤認保護が起きるのか,想像できない方も多いと思います。
「保護しなきゃ」と誤解されてしまう大きな理由は,ニホンジカの生態があまり知られていないためにあります。

生まれてしばらくの間,ニホンジカの幼獣は母親に茂みなどに隠され,地面でじっと伏せて母親が授乳に来るのを待ちます。
母親は幼獣から離れて採食に出かけます。
授乳は1日に3回くらいになるそうです。
地面に伏せている幼獣を見つけた人が「お母さんとはぐれたんじゃないか・・・」「うずくまって可哀そう」「このままじゃ死んじゃう」と思って,連れ去ってしまい,誤認保護が起こります。

人に育てられた動物は,どうしても人に慣れてしまい,大きな問題になります。
人に慣れたシカの場合,人里に出て交通事故を起こす危険や,農作物を食べて農家さんに被害が起こることが考えられます。
また,本来ならメスは産まれた群れの中で一生を過ごし,オスでも2~3歳になるまでは群れを離れずに生活し,多くのことを学びます。
なので,群れや親から学ぶことができないシカは,生きていく力が低いと思われます。
シカは,群れの仲間の認識が強く,よそ者を排除することがあるため,群れから離さないようにすることが大事になります。

もし,ニホンジカの出産期時である5~7月に(おもに6月頃)ニホンジカの幼獣が座り込んでいる場面に遭遇したら,親が少し離れているだけの可能性があります。
見つけても,そっとしておきましょう。
この時期の幼獣の移動能力はあまり高くありません。
移動能力の高い母親が探しているなら,すぐに手を出さずにそっとしておくことで,母親が見つけることができるかもしれません。

誤認保護は,人が動物の生態を知らないために起きてしまう,人の問題でもあります。
私たちがもっと近隣の野生動物のことを知ることができれば,誤認保護を防げるかもしれません。

救護センタースタッフ 森本