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2018年7月9日(月)[新着] 国際学術誌に職員の論文が掲載されました。

国際学術誌(電子ジャーナル) Scientific Reports に,職員の論文が掲載されました。

Estimation of chimpanzee age based on DNA methylation

DNAのメチル化を指標とするチンパンジーの年齢推定
Hideyuki Ito, Toshifumi Udono, Satoshi Hirata, Miho Inoue-Murayama
伊藤英之(1, 2),鵜殿俊史(1),平田聡(1),村山美穂(1)
Scientific Reports (2018) 8:9998, DOI:10.1038/s41598-018-28318-9(*外部のサイトへのリンクです。)
1. 京都大学野生動物研究センター,2. 京都市動物園生き物・学び・研究センター
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Common marmoset (Callithrix jacchus) personality, subjective well-being, hair cortisol level and AVPR1a, OPRM1, and DAT genotypes.

マーモセットの性格と幸福,体毛中コルチゾル濃度と遺伝子型の関係
Miho Inoue-Murayama, Chihiro Yokoyama, Yumi Yamanashi, Alender Weiss
村山美穂(1),横山ちひろ(2),山梨裕美(1,3),アレクサンダー・ワイス(4)
Scientific Reports (2018) 8:10255,DOI:10.1038/s41598-018-28112-7(*外部のサイトへのリンクです。)
1. 京都大学野生動物研究センター,2. 理化学研究所,3. 京都市動物園生き物・学び・研究センター, 4. エジンバラ大学
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DNAのメチル化によるチンパンジーの年齢推定
伊藤英之,鵜殿俊史,平田聡,村山美穂

チンパンジーについて,DNAのメチル化を検出することによって、これまで困難と考えられてきた年齢推定を可能にした。年齢の判明している飼育チンパンジー20試料(採取時の年齢2-39才)について,ヒトで年齢とメチル化の関連が報告されている遺伝子ELOVL2,CCDC102B,ZNF423のメチル化の割合を調べたところ,ELOVL2は年齢と正の有意な相関が見られた。CCDC102BとZNF423では有意差は見られなかったが,年齢と共に減少する傾向が見られた。これらの傾向は、ヒトに関する先行研究も一致していた。8個体の20年間の比較では、メチル化割合の増減に個体差が見られた。相関が低かったZNF423を除いて、ELOVL2とCCDC102Bの2遺伝子の5か所と年齢の相関係数は0.74と高く,誤差は5.4年であった。これらの遺伝子を指標として,ある程度の年齢推定が可能と考えられる。寿命の長い種においては,対象個体の年齢や集団の年齢構成を推定することができれば,生態の解明に大きく貢献することが期待できる。

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マーモセットの性格と幸福,体毛中コルチゾル濃度と遺伝子型の関係
村山美穂,横山千尋,山梨裕美,アレクサンダー・ワイス

コモンマーモセットを対象に,性格・幸福度・毛中コルチゾルレベルと遺伝子型の関連を調査した。対象となった個体は,理化学研究所で飼育されている68個体のオスと9個体のメスだった。性格と幸福度は,飼育担当者が質問紙を使って評価した。また,コルチゾルレベルを測定するために毛を収集し,AVPR1aとOPRM1,DAT遺伝子の型を判定するために口腔細胞を収集した。結果,ドミナンス・社交性・神経質傾向の3つの性格ドメインが検出された。他の種と同様,社交性の高さは幸福度と毛中コルチゾルレベルと正の相関を示し,神経質傾向は負の相関を示した。性格と毛中コルチゾルレベルは遺伝しており,遺伝子型との関連も見られた。AVPR1a の短い型は神経質傾向が低く,OPRM1 遺伝子のA111T領域の一塩基多型のAA型は低いドミナンス,低い神経質傾向,高い毛中コルチゾルレベルと関連していた。いくつかの遺伝子型との関連は,他種で報告されているものとは異なる傾向をしめしていた。今回の結果は,コモンマーモセットやその他ヒトを含む霊長類の性格を形作る基盤を説明する至近・究極要因に関して新たな視座を与えるものである。