飼育員ブログブログ

2020年6月1日(月)獣医室だより063 ホンドフクロウの貧血

 

先日野生鳥獣救護センターに来たホンドフクロウ。
どこにも外傷はなく飛ぶことができるのに,すぐに地面に落ちてしまう個体でした。
血液検査で貧血と栄養不良であることが分かったので,2週間栄養をとらせて様子を見ます。

体重も増えてきたので飛翔させてみたところ,見事に旋回,着地までこなしました。
さて野生復帰…の前に,貧血が回復したか確認します。

動物が貧血かどうかを確認する指標としてヘマトクリット値があります。
これは,血液全体に占める赤血球の体積を表す数値。
調べたところ,前回とほとんど変わらず33%。
鳥類の数値としては明らかに貧血です。

血液塗抹標本を作製して精査したところ。
鳥の赤血球には核があるのですが,その赤血球の中に紫色に染まった構造物が確認できました(写真中央に2個)。
これは,赤血球に寄生する寄生虫。
この虫が感染して赤血球を壊すことで,この個体の貧血を引き起こしていたようです。

この血液原虫,救護に来たホンドフクロウで,見逃してしまったことがあります。
その個体は,野生復帰ができなかったことから飼育ボランティアさんに引き取っていただきました。
この方が大変まじめで熱心な方で,定期的に民間動物病院に連れて行ってくださったそうです。
診察の結果赤血球に寄生虫がいることがわかり,動物園に連絡いただいた次第。
以来,貧血が疑われる救護個体は,血液塗抹を作成して精査しています。
その割には,今回も初回検査時には見逃してしまったのですが…

本日から駆虫を開始しました。
駆虫完了後,放野予定です。

土佐