飼育員ブログブログ

2010年11月20日(土)ビクトルの旅立ち~担当者の苦労話

 アムールトラ・ビクトル(雄13歳)が,浜松市動物園へ旅立ってから既に3週間が経ちましたが,皆さんどんな風に旅立って行ったか気になりませんか?今回は,その時のお話をしてみたいと思います。

 当園の猛獣舎は,1階部分に扉が無いため,直接動物を出し入れできません。そのため一度猛獣舎脇の細い階段を,数人がかりで担いで上り,2階キーパー通路にある扉から動物舎内に入り,内階段から下ろさなくてはいけません。今回はその逆で,動物舎から移動檻を設置した診療棟までの運び出しです。

 もちろんその対象はネコではなく猛獣トラです。確実に麻酔をかけて移動するのですが,万が一に備えいつでも追加麻酔できる準備を整えて臨みます。

 まずは,ビクトルにガス式麻酔銃で麻酔を打ちます。

 麻酔薬を打ってから10分後に,本当にかかっているか檻の外から棒で突っついて確認します。もちろんこれも担当獣医の仕事で,責任重大です。

 OKの判断をし,一番に獣医が室内に入って最終確認してから飼育担当達を呼び入れます。ここで檻に入れられればいいのですが,構造上入れることが出来ないため,手足をロープでしっかり縛り,ネットにくるんだ状態にしてみんなで室内から運び出します。

 今回は体重が160kgを越えるビクトルだったため,いつも糞や敷き藁を運び出すときに使用しているショベルローダーを2階テラス部分につけ,バケット内にビクトルを入れて診療棟まで運びました。

 せっかく麻酔をかけるので,健康診断を行います。まずは血液検査のための採血・・

 以前,爪がパッドに食い込んだことがあったため,ネールケアも入念に・・

 全ての診療が終わり,移動檻へ入れ,無事覚醒を確認して麻酔作業は終了です。

 この間,2時間弱。この後も観察を続け覚醒状態を確認します。夜には麻酔の影響もなくなり,あくる日無事に旅立っていきました。単に搬出作業と言っても,色々な苦労があるんです。

                                担当獣医 岡ちゃん