飼育員ブログブログ
2020年12月12日(土)獣医室だより091 ヒツジの骨折
8月下旬,おとぎの国で,ヒツジのマッチャが歩けなくなりました。
ヤギのうちの一頭と喧嘩したのが原因の模様。
X線検査で,左肘関節を骨折していることが分かりました。
足の骨折を治すためには,一定期間体重をかけないようにします。
人間であれば,松葉杖を使ったり,車いすに乗ったりしますね。
休ませすぎると筋力が落ち,関節も動かなくなるため,リハビリも必要。
一方,体重の重い草食獣において,足の骨折は予後は余りよくありません。
自発的にリハビリをしない上に体が大きいため,ケアが難しいのです。
また,長時間座りこんでいると,すぐに床ずれを作ってしまいます。
しかし今回,飼育員と担当獣医はあきらめませんでした。
数日間安静の後,毎朝ハンモックに吊り下げて足を動かせる状態にします。
抗生剤と鎮痛剤を投与し,足には血行促進を促す薬を塗り込みます。
段ボール2箱分あった促進剤をすべて使い切る勢いで,治療を進めました。
その結果,数週間後にはマッチャの脚が活発に動くようになりました。
予想以上に動き,吊り紐に絡まって職員を慌てさせることもありましたが…
やがて骨折した脚も使って立つようになり,1箇月後には,自分で歩いて餌を食べるようになりました。
複数の飼育担当者が時間を惜しまず治療したのが功を奏しました。
担当獣医師が家畜保健衛生所の出身で,大動物の治療経験が豊富だったのも成功のカギでした。
食欲を落とさずよく動くマッチャの性格も,プラスに働いたと思います。
私自身は担当獣医師ほど関わることはありませんでしたが,非常に勉強になる一件でした。
土佐